イタリア語でもっとも有名なことわざのひとつです。イタリア人は声量があり、あまり言葉もオブラートに包まず、口と頭が直結。わりと言いたいことをそのまま言ってしまいます。大切なことは気持ちを吐き出して、互いに歩み寄ること。そうしてのちに禍根を残さないこと。それが恋愛の達人であるイタリアの男女であり、恋愛だけでなく、仕事の職場の人間模様でもあります。
イタリアの文豪アンドレア・カミッレーリは、「真実を語る言葉は、まったく違う響きを持つ Le parole che ci dicono la verità hanno una vibrazione diversa」と言っています。その意味は「喧嘩」とは真実の言葉のやりとりで、だから喧嘩がない愛は美しくないということです。
イタリア式恋愛テクニック、「謝らないで謝る」?
「沈黙は金である。Il silenzio è d’oro.」
古代からイタリアに伝わる有名な諺です。日本語の「言わぬが花」とはまた異なる意味があります。
実はイタリア人は、謝罪の代用品としてよく“沈黙”を繰り出します。“欧米人は謝らない”と思っている方はいませんか? 実はそんなことはありません。イタリア人は“謝らないで謝る技”を熟知しているのです。
たとえば男女の喧嘩のなかで女性が求めることは、自分の話に真摯に耳を傾ける姿勢であり、ちょうどいい相槌とささやかな共感だけですよね。するべきことは、決して話の内容に対する意見や、叱責や評論ではありません。これは古今東西変わらないセオリーです。
ではイタリア人の男女が喧嘩をした場合、“謝らない”男性は、どのようにその場を収めているのでしょうか?
実は“沈黙の作用”をうまく使っているのです。日頃お喋りが止まらないイタリア人男性が、まずピタッと沈黙する。それだけで、一歩引いて謙虚になった印象を与えます。
そして相手の目を見ながら、黙って女性の話が途切れるまで耳を傾け、「僕もそう思う。Sono d'accordo.」と一言だけ添えてまた沈黙すればいいのです。そうすると、やがてすっと嵐は過ぎ去ります。安易な謝罪の言葉を使わず、一言だけで品よく白旗を上げる。「喧嘩がない愛は美しくない」と言いますが、翻って解釈してみれば、「美しく品性ある喧嘩を積極的にせよ、されば愛は続いていく」というなわけです。