生成AIに反対しているクリエイターたち
SF作家のテッド・チャンは、米誌ニューヨーカーに寄せた示唆に富む寄稿で、生成AIにも真の芸術は生み出せるという見解を徹底的に論破してみせた。チャンは、生成AIには「意図」が欠落している点に着目し、芸術の創造とはアーティストによる意義ある選択の連続がもたらした結果だと主張。「機械が吐き出したもの」について所有権を主張するには、ほんのひと握りのプロンプト(生成AIに対する指令や質問)だけでは不十分だと指摘した。
また、チャンは生成AIが意識的な観点から作品を生み出しているわけではない事実を強調し、こう書いている。「犬は、あなたに会えて嬉しいという気持ちを伝えることができる。言語をまだ習得していない幼児も同じく。どちらも言葉を使えないにもかかわらずだ。(OpenAIの生成AIサービスである)ChatGPTは何も感じず、何も望んでいない。この意図の欠如こそが、ChatGPTが実際に言語を使用しているわけではない理由だ」
映画『トランスフォーマー』シリーズのマイケル・ベイ監督も、インスタグラムへの投稿で生成AI技術を否定。AIは「創造しているのではなく、模倣しているだけだ。そして、怠惰な人々を大量に生み出すことになるだろう。だから、オリジナルのクリエイターたちよ、恐れることはない!」と書いた。
著作権をめぐる懸念や芸術的整合性の問題以外にも、生成AIは膨大なリソースを必要とし、データセンターでは莫大な電力と水が消費される。多くの論者は、生成AIの台頭をメタバースやNFT(非代替性トークン)といった将来性の見えないエネルギー集約型の技術トレンドと比較している。
生成AIのエネルギー需要はすさまじく、IT大手マイクロソフトのサーバーは、電源として米スリーマイル島原子力発電所を再稼働させることとなった。この技術の電力消費の激しさは、マイクロソフトの持続可能性に関する誓約の実行をおびやかしている。
同社のブラッド・スミス副会長兼プレジデントは、ブルームバーグ通信に「2020年にわが社は『カーボン・ムーンショット』と名づけた計画を発表した。それはAIが爆発的に普及する前のことだった」と語っている。「このため、AIの拡大とその電力需要に関するわが社の予測を考慮に入れただけでも、われわれが到達すべき月は2020年時点と比べて多くの点で5倍は遠ざかった」