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2024.09.27 12:30

AirPods 4にみる「アップルがオーディオ業界を変え続けている」理由

さらにタイトな統合へ

ここまでの話で、おおむねアップルがこのジャンルを革新できた理由が明らかになっているのではないだろうか。

それまでのイヤホンは、純粋に音楽を楽しむ道具だった。スマートフォンの普及で、そこにマイクを通じた通話機能の重要性が加わり、ANC技術の進歩といった背景も生まれているが、あくまでも追加的な機能にすぎない。

一方でアップルのモチベーションは、iPhoneの価値を高めることにフォーカスが当てられている。これはAirPodsの機能的価値を自社製品に閉じ込める囲い込みという意味ではない。

コンテンツや情報が集まり、常に身につけて歩くスマートフォンの機能を聴覚に拡張し、人々の生活に可能な限り寄り添いながらサポートするツールになることで、アップル製品を使うユーザーコミュニティをより強固なものとすることで、事業全体の持続性を高めているのだ。

AirPodsというアップル製品では最もカジュアルな製品に、単独で「Hey, Siri」を認識する機能を加える必要があったのも、今後、Apple Intelligenceを実装していく上で不可欠だったともいえる。

つまり、アップルが独自の考え方でワイヤレスイヤホンをイノベートし続けているのは、単体の製品ではなく、iPhoneと組み合わせた総合的なシステムとして、聴覚に対するアプローチを行うデジタルデバイスを再構築しているからに他ならない。

今後、現在イヤホン製品に使われているH2チップが更新されるだろう。その際にはさらなる統合が、iPhone本体のチップとの連携で行われ、よりタイトな統合へとつながっていくはずだ。

AirPods 4の機能ではないが、AirPods Pro 2に年内実装予定の聴覚サポート機能にも注視しておきたい。今後iOS 18に追加される「ヒアリングチェック」アプリを使うことで「ヒアリング補助」が追加される。

ヒアリングチェックは、ユーザーが自宅で約5分程度で聴力をチェックできる機能で、個人の聴覚プロファイルが作成される。ヒアリング補助は、このプロファイルに基づいて音を調整し、ユーザーの聴力をサポートする。
AirPods Pro 2の聴覚サポート機能は年内実装予定(Apple)

AirPods Pro 2の聴覚サポート機能は年内実装予定(Apple)

この機能は補聴器とよく似た仕組みで聴覚の補助を行うが、補聴器としては扱われない。また、日本において「集音器」として分類されるデバイスでもない新しいカテゴリーになるようだ。医療機器ではないものの、聴力に不安を感じる人々にとって、気軽に利用できる有用なツールとなる可能性がある。

なお、この機能の実装に向けて日本の厚生労働省と密接に協力しており、米国やカナダと同時期にサービスを開始することが見込まれている。

編集=安井克至

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