だが、シャーによると、ChatGPTが公開された後でMoveworksの幹部らは自社が提供する従業員サービスのチャットボットが「古く」感じられることに気づき始めた。2016年の同社のシードラウンドをリードしたライトスピード・ベンチャー・パートナーズのパートナーを務めるアリフ・ジャンモハメッドは、ChatGPTの公開は「世界中のすべての企業に対する警鐘 」だったと述べた。
生成AIの爆発的な普及はMoveworksの勢いに火をつけ、シャーによると過去1年半で同社の顧客ベースは倍増した。同社のソフトウェアは現在、OpenAIのGPT-4o、メタのLlama 3.1、そして自社モデルである「MoveLM」といった「数十」の大規模な言語モデルの上に構築されている。従業員とチャットボットの会話1400万件、サポートチケット5億枚、ハウツーやよくある質問のような企業関連情報を含む40万のウェブページから構築されたAI生成の「合成データセット」で学習している。
この分野に参入する企業が増えるにつれ、Moveworksは現在、企業にAI検索ツールを提供する評価額46億ドル(約6700億円)のGlean(グリーン)や、企業向けにフルスタックの生成AIプラットフォームを構築する、評価額5億〜7億ドル(約732億~1024億円)のWriter(ライター)など、急成長中のライバル企業と競合している。セールスフォースやマイクロソフトのような大企業も、自律的にタスクを実行できる独自のAIエージェントを発表している。
プラットフォーム提供先の各企業の特性を理解するシステムを構築する上で課題があるとシャーは言う。例えば、防衛関連企業でよく使われる子音だらけの略語を検出し、誰かが 「ミスタイプした」と勘違いしないようにしなければならない。また「マイケル・ジャクソンはどこ」というようなプロンプトに対して、この場合のマイケル・ジャクソンは人物ではなくおそらく会議室の名称であることを認識した上で、適切に対応できなければならない。
「こうした対応が難しい厄介な問題が実際に存在するため、これらの問題に取り組まない限りうまくいかないことに、一定の規模に達していないAI企業はまだ気づいていない」とシャーは話した。
(forbes.com 原文)