AIの浸透により求人1件あたりの応募数は倍以上に増え、リクルーターや採用責任者にとっては諸刃の剣となっている。AIの活用は求職者の応募プロセスを簡素化するが、同時に候補者についての真偽や質に関する懸念が生じており、リクルーターが状況を打開しようと腐心する中で求職活動が長期化する可能性がある。
求人応募プロセスへのAIの影響
近年、求人・求職サイトや「簡単応募」機能の普及により、求人への応募数は大幅に増えている。そして今、AIの導入が状況をさらに複雑にしている。財務や人材などの管理アプリをクラウド型で企業などに提供しているWorkday(ワークデイ)がこのほど公開したグローバル・ワークフォース・レポートによると、求人の4倍のペースで応募が増えているという。今年上半期の求人数は前年同期比7%増だったのに対し、応募数は同31%増で、求職者間の競争は激化している。
競争上の優位性を保つために、求職者はますますAIツールを利用するようになっている。ソフトウェアのレビューと比較のプラットフォームを運営しているCapterra(キャプテラ)の最近の調査では、求職者の82%が似たようなポジションを狙うライバルは応募書類の内容を充実させたり、誇張したりするのにAIを使っているだろうと考えていることが明らかになった。こうした認識から、多くの求職者が求人応募の戦略を練る際にAIを使う方へと駆り立てられている。
この調査によると、求職者の58%が仕事探しにAIツールを使っている。急速に台頭しつつあるAIツールの主な活用法には、履歴書の作成や改善(40%)、自分に合う求人探し(37%)、カバーレターの作成や改善(33%)などがある。
注目すべきは、職探しにAIを取り入れた求職者はそうでない人に比べ、平均で50%近く多く応募できることだ。
職探しでAIを利用する主な利点について調査参加者に尋ねたところ、最も多く挙げられたのは、迅速に応募書類を提出できること、それから魅力的な候補者として雇用主にアピールできる可能性があることの2点だった。
だがAIを就職活動のプロセスに組み込むことで、雇用者と求職者の双方にこれまでなかった倫理面での問題と、潜在的な落とし穴が生じている。Capterraの調査では、求職者の大半(83%)が欺瞞的または逆効果と考えられる方法でAIを利用していることが明らかになった。
また、約3分の1(29%)がテスト課題やスキル評価を行うのにAIを利用しており、実力をごまかしている可能性がある。同様に、4分の1以上(28%)が面接の回答を作成するためにAIを使用したり、見境なく多くの求人に応募するためにAIを使用したことがある(26%)と回答している。
こうした行為は、応募書類の信憑性に疑問を投げかけるだけでなく、採用する側に負荷をかけ、最終的には採用プロセスの効率と公正さを損なう恐れがある。