では、これからの人材に期待されるのは何でしょう? 筆者は、感じる力とエンジン+ステアリングが大切とアドバイスしています。
感じる力と強力なエンジン
2012年に東京でUber創業者トラビス・カラニック氏に日本参入の相談を受けたとき、彼のビジョンと、データとインテリジェンスへの突出したこだわり、アグレッシブな姿勢に強く印象付けられました。
米国の多くの人がタクシーに不満を持っていたはずですが、あきらめたり麻痺して強く感じなくなっていたのではないでしょうか。しかし、カラニック氏は現状に違和感を覚え、イノベーションの機会を感じて、起業しました。多くの人が疑問を呈しても、カラニック氏の行動力はそれをものともしませんでした。そう、彼は感じる力とともに、飛び抜けたエンジンを持っていたのです。
数は少ないですが、大企業にも起業家的な方がいます。富島正さんは川崎製鉄(現・JFEスチール)で米国のベンチャー企業との合弁会社を作るなど半導体の新事業のリーダーを務めた後、川鉄システム開発の社長として株式上場させました。ソニーでプレイステーションの父とも言われた久夛良木健さんの活躍は伝説的です。この様なリーダーに共通するのは、あふれる行動力、つまりエンジンです。
言うは易く行うは難し。大半の人々はこれほどの行動力を持っていません。スタートアップでも大企業でも、こうしたリーダーたちは既存の理屈を超えたところで直感的にギアを入れて走るのです。
活かすも殺すもステアリング次第
ある大企業の社内起業家は、当初のターゲット顧客が無理と分かると、多数の顧客ヒアリングを短期間に行い、ピボット(事業転換)を遂げて、社内のGoサインを獲得するに至りました。ある起業家は同時に複数の顧客層をターゲットにする当初計画を、絞り込む方がよいとの一部メンターの助言を聞かず、前進したあげく資金が尽きて頓挫しました。Uber創業者カラニック氏ですが、暴走してしまい、遂には会社を追われることになりました。前に進む馬力というかエンジンは大切ですが、優れたステアリング、つまり軌道修正などのハンドル捌きがなければ行き詰まります。
これは新事業だけではありません。既存事業でもチャレンジあふれるものやオープン・イノベーション的なものなど、ステアリングが重要になるプロジェクトは多々あります。