この現状を打破しようと、日本企業をテクノロジーの力で変革し、国全体を元気にするとともに、コンサルティング業界のビジネスモデルも変えていく志のもと創業されたのが、クオンツ・コンサルティングだ。
2023年10月に創業し、早くも多数の大企業から経営支援の依頼を獲得している同社。
3年9カ月で東証プライム市場に上場を果たし、一時は時価総額4,000億円(2024年2月時点)規模に成長したM&A総合研究所が新たに立ち上げた、事業会社発のファームとして注目を集めている。
掲げるビジョンや同社の独自性、そして今後の展望を執行役員パートナーの武藤祐希(以下、武藤)とシニアマネージャーの原崇(以下、原)が語った。
日本経済へのインパクトを出すために、大企業の価値向上と変革に挑む
クオンツ・コンサルティングの創業は、グループの原点であるM&A仲介ビジネスで得た気づきに由来する。日本全体を元気にするためには、中堅・中小企業だけではなく大企業の企業価値を上げていくことも同時に必要だと痛感したと、執行役員パートナーの武藤は言う。「ユニコーン企業の輩出や中堅・中小企業支援も大変意義がある取り組みです。それと同時に当社は大企業の支援にも注力し、日本経済全体の価値を上げていきたいと考えています。」(武藤)
東証プライム上場企業として経営をしてきたからこそ見えてきた、日本企業の企業価値への痛烈な課題意識と「日本の未来を明るくしたい」という揺るぎない思い――。これが、事業会社発のコンサルファーム設立につながった。
事業会社発のコンサルティングファームがもつ唯一無二の強み
クオンツ・コンサルティングは、「テクノロジー×戦略で実益主義の伴走を。」というパーパスを掲げている。それを実現するための強みは、M&A総合研究所がもつ経営哲学とノウハウだ。M&A総合研究所は業務効率化を実現すべく、エンジニア出身である創業者の佐上峻作がリードし、圧倒的な効率化による生産性向上を目指して、徹底して業務のDXを進めてきた。こうして中堅・中小企業の経営者と向き合う時間を最大化し、創業から3年9カ月というスピードで上場を実現したのだ。
クオンツ・コンサルティングが属するM&A総研HDが、全社で徹底しているのは、クライアントの経営・執行双方の「現場の解像度」を上げることだ。
クオンツ・コンサルティングのコンサルタントもM&A総研のM&Aアドバイザーも、企業の大きさに違いはあれど、経営層・コーポレート・事業の全階層で得られる現場の生の声と組織の実態を吸い上げ、会社の方向性を議論する状況を作り出している。
単にM&AやDXの戦略を描いて終わるのではなく、クライアントと一体となって描いた戦略を、企業の細部にまで浸透させ、その結果として変革が企業内部で自ら連続して生まれるサイクルを見届ける瞬間まで伴走するのが、同HDの強みである。
シニアマネージャーの原崇(以下、原)は、経営も現場も熟知しているからこそ、組織に深く入り込んで両者をつなぐ価値を提供できるという。自らがチームを引きつれ工場や製作所などの現場に足を運ぶことは日常茶飯事だ。
「コンサルティング業界ではややもすると現場での実行が軽視されがちですが、本来なら、戦略立案と実行の両輪とが回らなければなりません。当社は事業会社発のファームとして、現場にも徹底的に伴走して結果を出すことにコミットメントします。これは我々のDNAです」(原)
クライアントのCxOと日々議論を重ねている武藤も、「経営幹部から現場まで企業全体のあらゆる側面を理解し、同時並行で変革を実感できるご支援に対して、多くのお客様から評価をいただいています」と手応えを感じている。
実行にまで強くコミットメントするからこそ、最終的にはクライアント企業だけで戦略実行やDXが進むことを目指すのが同社の特徴だ。
ビジョン実現を後押しする同社の強みは、他にもある。自社の急成長を実現したDXやAIといったテクノロジーを活かし、DX・ITコンサルティングサービスを提供している。机上の空論ではなく、自分達が急成長した実績に基づいたコンサルティングを行っている。
さらにITコンサルティングだけではなく、M&A仲介ビジネスによって培われたM&Aの知見や高度な金融のノウハウを用いて、M&A戦略やディール組成、PMIの一気通貫のサービスに加え、IRなどのコンサルティングサービスも提供できる。上場1年で株価を5倍にした実体験に基づき、常に変化する機関投資家やマーケットの動向を踏まえ、企業価値向上のメカニズムや決算説明・IR資料の作り方に至るまで手掛ける支援が強みである。
戦略×IT/DX×金融の掛け算で、クライアント企業へサービスを提供することで、日本企業の企業価値向上の実現に邁進する。
チームの総力戦で、クライアントに真の実益をもたらすカルチャーを醸成
創業フェーズにあるクオンツ・コンサルティングには、大切に育んでいる企業カルチャーがある。それは、社内の不和につながってしまうような組織の壁を決してつくらず、全メンバーの知見や経験をクライアントのために総動員できる姿勢だという。
個人主義の色合いが強いコンサルティング業界において、コンサルタント同士の壁を無くし全員が協力する体制を作ることで、より大きな価値をクライアントに提供できるという考えに基づいている。
「全社員がオープンマインドであることは、組織が大きくなっても守り抜きたいカルチャーです」と原は強調する。
こうした想いの原体験には、原が過去にコンサルタントとして抱いていたジレンマがある。大きな組織であったがゆえに各コンサルタントの役割範囲が限定的になりがちで、顧客に貢献したいという思いと、自身の成長速度との間にギャップを感じていたという。
さらには産業やサービスライン軸で、P/Lが細分化される組織構造の壁もあり、組織の多層化・拡大によって、クライアントにとっては必ずしも最適ではないチーム編成になることもあった。
その経験から、チーム一丸となり価値を発揮する環境を求め、クオンツ・コンサルティングへ参画した経緯をもつ。国内・外資問わず大手ファーム出身の優秀なコンサルタントが続々とジョインする同社だが、出身ファームや年代関係なくフラットに議論できる風土が早くも醸成されているという。「これからも全員が能動的に動ける組織であり続けたい」と原は語る。
ベテラン社員が若手社員を専属で担当し、育成するカウンセラー制度も、社員の成長スピードを加速させている。同社では、マネージャー以上の職位のメンバーが直接プロジェクトでのOJTを行っている。業務に対してのフィードバックやキャリア相談を毎日細かく実施しているという。
また、案件も企業価値に直結するM&A/IRの戦略やIT/DXなど豊富にあるため、若手社員も自分の志向に合わせた案件に入ることができ、クライアント先で自らプレゼンテーションや提案活動を行う機会が多いため、成長のスピードも早いという。
「企業変革を実現するためには、クライアントへ訪問することが不可欠だと考えています。クライアントの立場で考えると、実際に会ったこともない人に重要な課題を打ち明けることは難しいでしょう。我々は、真の価値を届けるために、年齢やランクを問わず、ファクトに基づき仮説思考でまっすぐなロジックで常にプロフェッショナルとしてクライアントと向き合います」(武藤)
戦略・IT/DXコンサルのために、次世代のビジネスモデル創造に挑む
日本企業の企業価値を向上させるためには、コンサルティング業界のビジネスモデルを変革する必要もあるとクオンツ・コンサルティングは考える。コンサルティング業界は、コンサルタント個人の技量で価値を発揮する伝統があるが、一方で属人的になりがちであり、近年では業界そのものがコモディティ化しているという危機感を抱く。クオンツ・コンサルティングでは、クライアントの経営・執行や各ステークホルダー間のバランスを維持しながら、クライアントの企業価値向上といった実益をもたらす新たなコンサルティング像を目指す。本社が日本にあるため、日本企業の経営課題・要望に合わせた契約体系や支援体制を柔軟に変化させることが可能であるという。
また徹底した合理的なKGI/KPI管理と常に業務を標準化/効率化する仕組みにより、「クライアントと現場で汗をかく」というトラディショナルなコンサルテーションを徹底できているという。
「中長期的には人月型のビジネスモデルから脱却したいと考えています。コンサルタントが創出した付加価値に応じて報酬が決まるような世界を実現して、コンサルタント自体の付加価値も上げていきたいです。
長い年月がかかるかもしれませんが、コンサル×金融のプロフェッショナル集団が、日本企業の価値を上げ、日本の経済発展に貢献し、それによってコンサル自体の価値も上がっていけば良いと考えています」(武藤)
そのためには、クオンツ・コンサルティングがマーケットに認知される規模に成長する必要がある。目指すはグループ全体でまず1兆円の時価総額規模になることだ。
「成長の実現に向けては、クライアントに選ばれ続ける存在である必要がある。そのために品質、コスト、スピードに徹底的にこだわり実益主義を磨き続けていく。そしてその取り組みを加速させるための組織づくりを進めていきます」(原)
持続的かつ安定的にクライアントへ価値を届けるためには、コンサルタントの人員増加もまだまだ必要である。同社が重視しているのは、スキルや経験よりも、素直で謙虚に自らと向き合う姿勢と、チームで価値を発揮することを好む職業観だ。
「当社は現在立ち上げフェーズなので、メンバー全員が経営視点で考え、当事者意識を持って仕事をしています。そういった働き方や、当社の目指すビジョンに共感していただける方に、ジョインしていただきたいと考えています」と武藤は力強く語った。
クオンツ・コンサルティング
むとう・ゆうき◎クオンツ・コンサルティング 執行役員 パートナー。日本と韓国で学部時代を過ごし、英国のKing’s College Londonで修士課程を修了。Big4の2社を経て、現職。IT/DXを通じたロードマップ策定やグループガバナンスのテーマからキャリアをスタート。2年目からは、経営戦略で特にM&Aや事業ポートフォリオ見直し等のストラテジー領域に特化。中期経営計画/長期ビジョン策定や事業ポートフォリオ見直し、M&A/JV組成といったアライアンス戦略、成果報酬型で短期間に数百億円程度のコストダウン・全社BPR、分社化ターンアラウンド等、短期的な財務価値の向上だけでなく、ステークホルダーを意識した中長期的な企業価値向上をテーマに、CxOアジェンダに直結するコンサルテーションを中心に手掛ける。
はら・たかし◎クオンツ・コンサルティング シニアマネージャー。日系大手SIer、日系大手総合コンサルティングファームを経て現職。大規模IT案件のマネジメント、IT企画、要件定義から運用・保守まで多数経験。豊富なデリバリー経験を基盤とした、ビジネス部門・IT部門双方を巻き込んだ現地現物主義のPM伴走支援、DX推進支援に強みを持つ。現在は幅広い案件のマネジメントを行いながら立ち上げメンバーとしてあらゆる業務に携わる。