経営・戦略

2024.09.28 11:30

ARR341億円、楽楽精算のラクスが黒字経営を続けられる理由

中村崇則|ラクス代表取締役

国策としての働き方改革推進などの動きもあり、10年代半ばからバックオフィス向けSaaS市場は着実に拡大を続けてきた。ラクスも15年の上場を経て、17年ごろから楽楽シリーズの成長に本格的な手応えを感じ始めたという。そして直近のコロナ禍、改正電帳法やインボイス制度による特需につながっていく。
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市場環境の変化を爆発的成長につなげることができたのも、的確な「備え」があってこそだ。開発、営業、マーケティング、カスタマーサクセスなど全方位で採用を拡大してきた。24年3月時点の従業員数は連結で2561人。「特需があっても、それを受ける体制がなければ事業成長にはつなげられない。組織をしっかりつくってきたのが大きい」と中村は胸を張る。ラクスは上場直前のタイミングで会社の行動指針を明文化したが、近年、急成長フェーズに備えてカルチャーをあらためて明確化して社内外に周知。オンボーディングの仕組みも整え継続的な改善に取り組んできた。結果として、会社にフィットする人材が集まり、成果を出す体制が確立されてきたという。

「チームで決めたゴールを達成するために何をしなければならないかという発想で、やるべきことを地道にやれる人がラクスには合っていますね。チームが情報や事業を取り巻く空気のようなものも共有して密に協力することがSaaSビジネスでは大事だと思っているので、基本的に水曜日以外は出社です。それでいい、それがいいという人が入社してくれるので、エンゲージメントも高めやすくなっています」

ルールで縛るのではなく、カルチャーで価値観や行動様式を統一することで、組織の活力を失わずに一体感を醸成できると中村は考えている。
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特需は終わったが、国内企業のバックオフィスにおけるデジタル活用はまだまだ道半ばだ。直近では請求書受け取りサービスの「楽楽請求」もリリースするなどポートフォリオを拡大しつつ、M&Aも有力な選択肢として、成長をさらに加速させる。国産SaaSベンダーにとっては未踏のポジションである「日本を代表する大企業」に成長し、社会にポジティブなインパクトを与えたいと意気込む。


なかむら・たかのり◎1973年生まれ。神戸大学経営学部卒。NTTを経て、メーリングリストサービスを提供するインフォキャストを設立し、楽天に売却。2000年11月、アイティーブースト(現ラクス)を設立し、代表取締役社長に就任。15年に東証マザーズに上場。

文=本多和幸 写真=ヤン・ブース

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