2000年に始まり、日本の芸術祭ムーブメントの先陣を切った「大地の芸術祭 越後妻有アートトリエンナーレ2024」(新潟県十日町市、妻有町)は7月から現在も開催中(11月10日まで)。9月13日からは「北アルプス国際芸術祭2024」(長野県大町市)もスタートした。
そんな花盛りの地域主催の芸術祭のなかで、筆者が紹介したいのは9月28日(~11月24日)から開催される「森の芸術祭 晴れの国・岡山」だ。
今回が初開催のこの芸術祭は、岡山県北部の津山市など12の市町村が参加し、海外13カ国を含む現代美術家や音楽家、ダンサー、デザイナー、華道家、料理シェフなど幅広いジャンルの42組43人のアーティストを迎えて行われるものだ。
展示会場は幻想的な鍾乳洞の中
岡山県北部は緑の深いエリアであり、各地の展示会場を訪ねると、「森の芸術祭」という名称にふさわしくのどかな山あいの風景が広がる。アートディレクターを務めるのは、これまで国内外の先駆的な美術展に携わってきた「金沢21世紀美術館館長」の長谷川祐子さん。建築家や科学者、民俗学者らも交えた異色の知的クリエイターたちが参画しているのも興味深い。
そして、この芸術祭の目玉の1つは、なんといっても写真家で映画監督の蜷川実花さんのインスタレーション作品だ。
写真を中心に映画や映像作品、最近ではさまざまな空間インスタレーションを多く手掛けるアーティストで、『ヘルタースケルター』(2012 年)など色彩の魔術師ともいわれる長編映画、Netflix オリジナルドラマ『FOLLOWERS』(2020年)といった話題作を監督してきた。
また彼女は、データサイエンティストで慶應大学医学部教授の宮田裕章さんらと結成したクリエイティブチーム「EiM」の一員としても活動している。
昨年末、同チームが企画制作し、東京港区の虎ノ門ヒルズで開催された体験型展覧会「蜷川実花展 Eternity in a Moment 瞬きの中の永遠」では、映像インスタレーションや写真、立体展示などで構成された11作品が公開され、81日間の会期中25万人を超える来場者を記録している。