ものに時間がのると、価値になる
森は当初、自分の経験を踏まえ、次世代の日本人をtefutefuのターゲットにしていた。なじみのあるものは、外に出て俯瞰しないと魅力を見出しにくい。「そこに気づいて誇りに思えれば、日本人が世界で活躍する後押しになる」と考えたからだ。しかし、パンデミックを経て、海外でこれまでの気づきをシェアするなかで、父親が日本人、母親がアメリカ人というダブルルーツを生かして、まずは海外に伝える発信者になろうと発想を転換。最近は、文化的なニュアンスも英語で説明できるようになった。その過程で、外国人には伝わりづらい「侘び寂び」を表す「色寂(いろさび)」という言葉をtefutefuで考案、登録した。「個人の解釈に委ねられる侘び寂びに対して、色という視覚要素が入るとわかりやすくなる」と森。それをテーマに、来春にはロサンゼルスのギャラリーで展覧会を開催する予定だ。森がキュレーターとなって職人と共創し、経年変化する布や竹、鉄などのマテリアルを通して、エイジング、ヴィンテージの美を表現するのだという。
「ものに時間がのると価値になる」。朽ちていく姿の美しさは、モデルとして向き合っているテーマでもある。tefutefuとしてはプロダクトよりも体験に注力するが、つくりたいものはたくさんあると楽しそうに笑う。
「感覚に作用するものをつくりたくて、まずは香りを。そしていつか、まとうものに行き着くことができたらと思っています」
森 星◎1992年、東京都生まれ。モデルとして国内外で活躍。途上国の女子を支援する公益財団法人プラン・インターナショナル・ジャパンのアンバサダーを務める。21年にtefutefuを創業し、クリエイティブディレクターを務める。