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2024.09.30 11:00

若き起業家が提供するCAD生成AIが日本のものづくりに風穴をあける

コンサルファームのrenue(リノイ)と先端技術開発企業のWOGOは、2024年6月に設計プロセスに生成AIの技術を用いる「3D・2D図面AI」をリリースした。人材不足や職人の高齢化などさまざまな課題が山積する製造業に、生成AIの技術が与えるインパクトについて探っていく。

renueとWOGOが提供する「3D・2D図面AI」は、「六角形の頭部ボルトネジをつくって」など自然な言葉で指示を行うことで3Dや2DのCADモデルを取得できるサービス。ほかにも仕様書アップロードや類似案件の指定による生成などが可能で、設計業務の自動化、時間短縮を実現できると、リリース直後から製造業や建築業のみならず多方面の業界で注目を集めている。

技術の高さと現場の理解を両輪として

「心を動かす、テクノロジーを創る」 をミッションに掲げるWOGOは、2021年1月の設立からわずか1年で、スマホでの3Dスキャン&3D編集が可能なアプリ「WIDAR」を提供するなど、世界から注目されているスタートアップのひとつだ。「3D・2D図面AI」が生まれたきっかけは、WOGO CEOの秦竟超(しん こえる。以下、秦)がrenueに相談を持ちかけたことに始まる。

「『WIDAR』をはじめとする我々の技術や知見を生かした新しい事業を模索していた際、生成AIの分野でさまざまなサービスを提供しているrenueさんの存在を知り、協業できないかとお話しさせていただいたのが始まりです」(秦)

renue 代表取締役の山本悠介(以下、山本)は「自社にとっても新しい事業創出に乗り出す、いい出会いだった」と振り返る。

「弊社はコンサルタントを軸にしていますが、課題を抱える企業に、これまでなかった着想による技術やサービスを付加することで、その企業を成長へとつなげていくことができないかと考えていました。WOGOさんの技術力が非常に高いことは周知の事実ですが、価値ある技術をユーザーに届けたいという強いに共鳴し、2社がもつ知見を合わせれば新しいサービスができると確信。まずは2D、3Dの技術と親和性のある製造業や建築業にアプローチを始めました」

製造業や建築業はDXが遅れている業種とも言われている。なぜなら、設計図や発注書、部材の指示書などあらゆる書類が企業ごとに異なることに加え、現場の状況や情勢にその都度応じていくことが必要とされる世界だからだ。

AIで目指すのは、あえて「80点」

一方で、業界の課題に生成AIを積極的に取り入れようとした関係者は少なくないと山本は言う。

「自社の課題を解決できないかと、近年提供され始めた生成AIのオープンソースを試したという事業者の方がいました。ですが、一般公開されているサービスの多くは、例えば特定のキャラクターを描くことはできても後ろ髪が正しく生成されないというようなことが多々あるのです。つまり、それらしいものは生成できるが、精密な生成はできていない。業界の現場では、こうした現実を目の当たりにして生成AIの技術導入を断念したという話を伺いました。

我々が提供するサービスは、数ミリまたはそれ以下の修正にも対応できる精密な技術をもっています。生成AIに疑念を抱いている方々にもう一度興味をもっていただけるよう、丁寧な説明と課題のヒアリングを繰り返すことで、賛同してくださる企業の方々を増やしていきました」

生成AIの技術力について、秦は次のように力説する。
「我々が提供する生成AIは、クライアントがこれまで行ってきた仕様書などを元データとしているため、完全にオリジナルの製品をつくることができる。また微細な調整も可能です。

ですが、100%の完成品を目指すのではなく、あえて人がつくった場合の80点を目指しています。そうすることで技術者の方に精度の高さを知ってもらいながら、自身がもつ技術と生成AIの違いに気づいてもらいやすくなる。またレビューがしやすく、より微細な生成を実現するためのフィードバックを得ることにもつながっています」(秦)
renue代表取締役 山本悠介

renue代表取締役 山本悠介

複数の企業の協力を経て、業界に共通する課題を認識したrenueとWOGOは、クライアントの事業体系に沿った独自のシステムを構築した「3D・2D図面AI」を創り上げた。

3D・2D図面AIは、指示事項となる「プロンプト」を入力することで、3Dモデルや2D図面を生成することができるサービスだ。既存のCADやソフトウェアを代替するのではなく、CADソフトを使える人材が不足している現場の課題をAIの力でサポートする。図面や3Dモデルを読み込み、規定に合っているかをレビューすることが可能だ。

「例えばオフィスを設計する場合、どんなスペースをいくつ作り、どんな設備を何個設定するかという要件定義を行い、その内容を議事録や仕様書として残します。その後、設計作業で図面を作成したのちに、施工時には担当者が要件と合っているかを目視で確認している。これには時間も労力もかかる。

本サービスを活用すると、2DのCADデータと議事録を読み込ませることで、要件通りに図面が作成できているかをサービス上で確認することができます」(山本)

現在、本サービスは部材メーカーを中心に活用されている。renueとWOGOが生み出した画期的なサービスは業界でも話題となり、中小企業だけでなく、大手企業からも声が掛かり始めているという。

これからの製造業を導く基礎技術へ

製造業には業界をまたぐ課題となる人材不足や、職人の高齢化で技術が伝承されにくいという課題がある。「3D・2D図面AI」はこうした課題の解決にも役立つと秦は話す。

「生成AIに業務を学習させるためには、現場の暗黙知をナレッジとして落とし込む必要があり、暗黙知が可視化されます。これにより技術の伝承はこれまで以上に効率的に行えるようになるでしょう。また『六角形の頭部ボルトネジをつくって』などの簡単な言葉で指示が行える点も多くの方にストレスなく活用いただける特徴のひとつとなっています」(秦)
WOGO CEO 秦竟超

WOGO CEO 秦竟超

2社が目指すのは、技術力と現場への理解という強みを生かし、製造業界にさらなるインパクトを与えることだ。

「リアルのデータを集めて、仮想空間でリアル空間を再現するデジタルツインも実現していけば、さらに可能性が広がっていきます。今後も技術力と現場への理解という強みを生かし、製造業の業務改革を行うことで日本の競争力を上げていきたい」(秦)

山本は「課題の多い業界に最新技術を導入することで、新たな魅力が生まれる可能性がある」と話す。

「ノルウェーでは漁師が若手エンジニアの人気の職業になっているという話があります。その要因のひとつは、持続可能な漁業を目指して政府が最先端の技術を漁業に導入したことにあると言われています。私は、人材不足や職人の高齢化など課題が山積している日本の製造業や建築業でも、最新技術を活用することで、ノルウェーと同じような状況をつくれるはずだと思っています」

技術の発展は思わぬ形で影響を広げていく。「3D・2D図面AI」が製造業界の基礎技術となれば、未来を大きく変えていくことになるだろう。

renue
https://renue.co.jp/

WOGO
https://www.wogo.ai

やまもと・ゆうすけ◎renue 代表取締役。2008年京都大学工学部に入学。10年に同大学を中退し、東京大学文学部ドイツ文学科に入学。卒業後はアクセンチュアにて金融・ITのコンサルティング業務に従事したのち、ジラフにてプロダクトオーナーやCMOを兼任。その後フリーランスを経て21年3月設立。

しん・こえる◎WOGO CEO。東京大学工学部電子情報工学科卒業。在学中に起業し、さまざまな業界にITコンサルティング/システム開発サービスを提供。2021年1月にWOGOを設立。

Promoted by renue | text by Kana Kubo | photograph by Kayo Takashima | edited by Aya Ohtou(CRAING)