サイエンス

2024.09.27 17:00

絶滅したと思われた古代魚シーラカンスは、なぜ今日まで生き続けられたのか

1990年代に入ると、再び注目に値する科学的発見があった。インドネシアの島々で別種のシーラカンスが見つかったのだ。現在、シーラカンスは2種に分類されている。一つは学名をラティメリア・カルムナエ(Latimeria chalumnae)といい、インド洋西部、主にアフリカ大陸東岸のコモロ諸島に生息するシーラカンスだ。そして、もう一つのインドネシアで見つかった別種(インドネシアシーラカンス)には、ラティメリア・メナドエンシス(Latimeria menadoensis)の学名が与えられている。

古代魚のシーラカンスが時を超えて生き続けることができた理由としては、以下のような要素が考えられる。

・環境への適応:シーラカンスは、独特の生理学的特徴を備えており、これが数百万年にわたって生き延びるにあたり有利にはたらいたと考えられる。たとえば、筋肉質の基部を持つ胸びれは、陸上に生息する脊椎動物の四肢の原型とみられているが、複雑な深海の環境を遊泳するのに適応した形をしている。

・安定した環境:シーラカンスは、海中の洞穴や深海など、水深の深い安定した環境に生息している。こうした環境は、地質学的な時間が経過するなかでも大きく変化することはなかった。また、捕食者も比較的少なく、生存競争もそれほど激しくない。そのため、シーラカンスは大きな形態の変更を伴うような進化への圧力を避けられたとみられる。

・代謝の低さ:シーラカンスは代謝率が比較的低く、そのため餌になるものが少ない環境でも生き延びられた。また、代謝がゆっくりである点は、長い時間の経過で起こった環境の変化に対応する上でも有利にはたらいたと考えられる。

・特化した「ニッチ」:シーラカンスの生態学的ニッチ(生態系において占める地位)は、水温の低い深海を生息適地とし、そこには大きな変化は起きない。安定した生息環境にいたことで、より変化の大きい環境に生息する生物種に比べて、適応への圧力は低かったとみられる。

まとめると、シーラカンスが地球史上の激変を乗り越えて生き延びられた背景には、環境への適応、環境の安定性、そして特化した生態学的ニッチの相乗効果があったといえるだろう。

「生きた化石」シーラカンス(Shutterstock.com)

「生きた化石」シーラカンス(Shutterstock.com)

forbes.com 原文

翻訳=長谷 睦/ガリレオ

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