念のため言っておくと、屈指の中国強気派として知られるダリオは、中国を見限ったわけではない。だが、先週シンガポールで米ブルームバーグ通信の取材に対し、景気が一段と冷え込む中、17兆ドル(約2450兆円)規模の中国経済は「大きな問題を抱えている」と語った。
ダリオは不動産価格や株価の下落を挙げながら「近年、中国を取り巻く状況は変化しており、より困難な環境になっている」と指摘した。実際のところ、ダリオは習近平体制下の中国経済が「1990年の日本よりずっと厳しい状況」に直面するかもしれないと考えている。
ブリッジウォーターは中国を見捨てるわけではない。ダリオは「当社のポートフォリオに占める中国の割合は小さいが、今後も中国に投資するだろう 」と言い直した。理論的には、投資の規模と構造が適切でさえあれば、中国は依然として「非常に魅力的な投資先」だとも述べた。
問題は、この「適切でさえ」という条件節の重要性が、月を追うごとに増しつつあることだ。中国の鉱工業生産は、投資と消費が軟調に推移する中、8月の時点で2021年以来最も長い低迷期にある。強まる逆風を受け、習指導部は今年の成長目標である5%を確実に達成するための措置を考案する必要に迫られている。
これまでのところ、習の側近らは国内総生産(GDP)が伸び悩んだときの常套手段である財政刺激策を強化するのに驚くほど手間取っている。中央銀行の中国人民銀行も、新たな金融支援については意外に及び腰だ。
中国が今年直面している問題は、習率いる共産党にとって大きな試練だ。14億人の国民を支配する共産党が信頼を維持できるかは、GDPの推移にかかっている。習が中国を好景気と不景気のサイクルに再び陥らせることなく、消費者心理と需要を高める方法を見つけることが重要だ。