それでも、ダリオほど戦略に中国を深く取り込んでいる有力ヘッジファンドの大物投資家はいない。たとえば、2019年と2020年の一連のエッセイでダリオは中国の巨大な可能性について熱く語り、国際社会の「根強い反中偏向」に異を唱えた。
2020年10月には「長い目で見れば、時代を超えた普遍的な真理によって国が成功するのか、あるいは失敗するのかが決まる」とダリオは書いている。「簡単に言えば、生産性が高く、財政が健全で、支出を上回る収入があり、負債より資産のほうが早いペースで増えたときに国は栄える。こうした状況は、国民が十分な教育を受け、勤勉に働き、礼儀正しく振る舞っている場合に起こりやすい」
ダリオは「現在取り組んでいる研究で記録しているように、これらの尺度で中国と米国を客観的に比較すると、ファンダメンタルズは明らかに中国のほうが有利だ。人は偏見や先入観によって機会を見失う。もしあなたが中国で起こっていることと整合しない理由で中国に懐疑的になっているのであれば、雑念を払うことをお勧めする」とも指摘した。
その1年後、上海に駐在経験のある米紙ニューヨーク・タイムズの元記者デビッド・バルボーザが立ち上げたニュースサイト「ザ・ワイヤー」は、「ザ・チャイナ・ブル(中国強気派)」という見出しの特集記事でダリオを取り上げた。
繰り返しになるが、ダリオは中国から逃げ出したわけではない。だが、世界最大のヘッジファンドの創設者が警告を発しているという事実は注目に値する。ダリオが世界で最も多くの金を動かす投資家であるからだけでなく、ダリオの態度の変化が中国の2025年の見通しに対する懸念がかつてなく膨らんでいる中で起きたものだからだ。懸念材料には、日本が30年経った今なお苦闘しているようなデフレ圧力も含まれている。