レバノン各地で17日、ヒズボラのメンバーらが携帯していたポケベルが一斉に爆発し、民間人にも被害が出た。この事件は、翌18日に起きた無線機の一斉爆発ともどもイスラエルによる前例のない破壊工作とみられている。しかし、イスラエルご自慢の情報機関モサドがどのようにしてヒズボラのサプライチェーンに侵入し、5000人ものメンバーのポケットに仕掛けを施したポケベルやトランシーバーを忍ばせることができたのかは、謎のままだ。
最も興味深いのが、台湾ブランドのポケベルの出荷を担ったとされるハンガリー企業の役割である。首都ブダペストに拠点を置く「BACコンサルティング」について、米紙ニューヨーク・タイムズは諜報筋3人の話として、イスラエル情報機関のフロント企業であり、17日の攻撃を引き起こしたカラクリの決定的な歯車だったと報じた。
BACの正体とは、いったい何なのか。アーカイブされた同社ウェブサイトによると、AI(人工知能)、体系的リーダーシップ、地理空間データの分析に関連した広範なコンサルティングサービスを提供しているという。だが、電子機器製造の実績はないようだ。創設は2019年で、CEOのクリスティアナ・バルソニー=アルチディアコノと、デンマークを拠点とするビジネス開発コンサルタントのハンセンなる人物が共同設立したとされる。フォーブスは2人に取材を申し込んだが、本稿掲載までに回答は得られなかった。
英紙フィナンシャル・タイムズによれば、BACは2023年に約80万ドル(約1億1500万円)の収益を上げた。同社ウェブサイトに顧客に関する情報はほとんどないが、欧州連合(EU)の内閣に相当する欧州委員会において専門家として政策評価を担当していたと記載されている。もっとも、その業務内容はあいまいで「各種案件に応じたさまざまな多言語提案の評価」とのみ説明されている。
欧州委員会のバラージュ・ウイバリ報道官はフォーブスに対し、BACと直接取引した形跡はないとしながらも、バルソニー=アルチディアコノは2021~23年の短期間、欧州教育・文化執行機関(EACEA)の外部専門家を務めていたと証言した。