バルソニー=アルチディアコノは事件後、NBCに「私はポケベルを製造してはいない。単なる仲介者だ。誤解されていると思う」と述べた。
彼女の専門は科学と気候学である。イタリアのカターニア大学、英ロンドン大学(UCL)、ロンドン大学東洋アフリカ学院(SOAS)で学位を取得し、フランス国立科学研究センター(CNRS)に気候学の博士研究員として1年間勤めていたことをフォーブスは確認した。
しかし、その経歴には明らかな矛盾がいくつもある。
バルソニー=アルチディアコノはビジネス特化型SNSのLinkedInやオンライン履歴書に、国際原子力機関(IAEA)で国連事務所を拠点としたプロジェクトマネージャーを務めていたと記している。だが、IAEAの広報担当者はフォーブスに対し、実際にはインターンだったと語った。
また、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス・アンド・ポリティカル・サイエンス(LSE)で現代政治思想と民主化の学位を取得したとの主張についても、LSE広報が、本人の在籍当時に該当する学位は設けられていなかったと述べている。
LinkedInには非営利団体「アース・チャイルド・インスティテュート(ECI)」の役員だと書かれているが、英BBCの取材に対しECIは「彼女はこれまでもこれからもECIの役員ではない」と言明した。
フォーブスは電話やメッセージで本人に直接取材を試みているが、応答はない。
物理学と気候科学の分野にこれほど幅広い経歴を持つ人物が、どうしてここ最近でも指折りの驚くべき記憶に残るスパイ活動に巻き込まれる羽目になったのか。経緯は依然として謎のままだ。LinkedInを通じて連絡がとれた彼女の友人は、安全上の理由から匿名を条件に取材に応じ、BACの業務については何も知らないが「彼女が承知の上でこの件に関与していたとしたら、とても驚く」と語った。
レバノンではポケベルが爆発した翌18日に、今度はトランシーバーが一斉に爆発した。この2回目の攻撃にもBACが関与しているかどうかは、不明である。
(forbes.com 原文)