アート

2024.11.21 11:30

新しい文化のつくりかた:異彩作家とヘラルボニーの挑戦

ヘラルボニーの共同代表と契約作家たち。写真左から、fuco:、松田文登、marina、森啓輔、松田崇弥。まとっている衣装や小物は、作家自身が生み出した作品をモチーフにしたものだ。(撮影=ヤン・ブース)

肝心の企業とのコラボレーションはなかなか進まなかった。風向きが変わったのはコロナ禍だ。百貨店で多くのブランドが撤退。普通ならヘラルボニーも我慢の時期だが、ブランドの勢いを演出しようと、あえて空きスペースにポップアップを4店同時出店した。
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狙いが当たって、toBのコラボレーション案件が続々と舞い込んだ。JALや丸井グループだけではない。2022年10月には大阪・阪急うめだ本店をジャック。9階の広場には自社オリジナル商品のポップアップを出店したが、1階はロクシタン、2階はファミリア、3階はトゥモローランドというように、全フロアでブランドとコラボレーションを展開するまでになった。
2023年10月にJALと業務提携契約を締結。国際線ファーストクラスやビジネスクラスの機内アメニティキットやラウンジのカップなどに作品が採用された。

2023年10月にJALと業務提携契約を締結。国際線ファーストクラスやビジネスクラスの機内アメニティキットやラウンジのカップなどに作品が採用された。

ふたりが手ごたえを感じているのは量的な拡大だけではない。当初、企業コラボレーションは、CSRやSDGsといった視点からの利用が多く、カウンターパートもサステナビリティ関連部署が中心だった。それが事業部のマーケティング予算として普通に出るようになってきたのだ。

ヘラルボニーは企業と契約を結ぶ前に、原点の岩手に担当者を極力招くことにしている。アテンドは現在も岩手に住む文登の役割だ。

「るんびにい美術館や創業の地である祖母の家などを案内して、僕たちの思いを説明します。作家にも会っていただきますが、行く前は『障害のある人に会う』という意識だった方が、帰りには『〇〇さん、素敵だったね』と個人名になることが多い。障害があるから支援するのではなく、ひとりの作家として尊敬して、作品にも価値を感じるから一緒にビジネスをする。その流れができつつあるのはうれしい」

パリと岩手。両極端を内包してこそ文化

障害がある作家のアートとビジネスのエコシステムを構築しつつあるヘラルボニーだが、それは日本国内の話。世界ではまだこれからだ。
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もともと世界の視点は強くなかった。しかし23年5月、経産産業大臣のフランス視察に同行する日本のスタートアップ10社に選ばれた。そのときJETROのコーディネートで、アール・ブリュット(正規の美術教育を受けていない人による芸術)の世界的ギャラリスト、クリスチャン・バーストと面会。視野が広がった。

「僕らのビジネスモデルを説明したら、『この業界に30年以上いるが、初めて知った』『日本は障害がある人の社会包摂が遅れている印象だったが、日本で成立するなら世界でやれる』『日本語だけ?すぐ英語で発信しなさい!』と激励を受けました。帰国後、興奮して文登に『世界でやろう』と話したことを覚えています」(崇弥)
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文=村上 敬 写真=ヤン・ブース ヘアメイク=YASUHIRO MIKAMI(松田兄弟)、Asami Horie(アーティスト) スタイリング=へラルボニー

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