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2024.09.21 09:00

カリフォルニア州の「政治的なAI偽動画禁止法」に差し止め訴訟

Win McNamee/Getty Images

Win McNamee/Getty Images

7月に人工知能(AI)を用いて加工したカマラ・ハリス副大統領を揶揄する動画をX(旧ツイッター)に投稿し、イーロン・マスクによってシェアされたことで注目を集めたユーザーが9月18日、カリフォルニア州で新たに成立した政治的ディープフェイクを規制する法律を阻止するための訴訟を起こした。この訴訟は、同州のギャビン・ニューサム知事が法案に署名した翌日に起こされたものだ。

カリフォルニア州の連邦裁判所に提出された訴状によれば、原告のクリストファー・コールズは、新たな法律が、ソーシャルメディア企業に選挙関連のAI生成コンテンツの排除を強要し、市民の言論の検閲を強制するための「権力の乱用」だと主張している。

Xで@MrReaganUSAのアカウント名を使用しているコールズは、7月に生成AIを用いてハリス副大統領の声を加工した動画を投稿したことで注目を集めていた。この動画は、ハリス副大統領が「私は、ディープステートの操り人形だ」などと言っているかのように見せかけるものだった。

コールズの動画は、マスクによってシェアされたことで広まり1億3500万回以上の閲覧数を記録している。
この訴訟でコールズは、「私は、自分が選ばれるべきではないと考える政治家を風刺するための絶対的な憲法上の権利を持っている」と主張している。その上で彼は、「ハリスに非常に似た声」を用いて「彼女の現実の政治的な主張を誇張した」と述べている。

カリフォルニア州で成立した法律には、「パロディや風刺であることの開示」が含まれているコンテンツは、適用を免除されるという規定がある。コールズは、この動画に「キャンペーン広告のパロディ」という説明を添えて投稿したため、その免除の対象になると考えられる。

しかし、この法律はパロディであることを告知する文言を「他のテキストと同じ大きさ」で記載することを要求しており、「この動画では画面全体を埋め尽くしてしまうことになるため、不可能だ」とコールズは主張している。

マスクは「言論の自由の危機」と主張

ニューサム知事は、17日に政治的なディープフェイク動画を厳しく取り締まる3つの法案に署名した。そのうちの1つの「下院法案2839」は、選挙の候補者に関する「欺瞞的な音声または視覚メディア」を配布することを違法とするもので、ただちに効力を発揮した。この法律で、候補者はディープフェイク広告を取り下げるための裁判所命令を求めたり、それを配布した人物を訴えたりすることができる。

また「下院法案2655」は、来年施行される予定で、Xやフェイスブックのようなオンラインプラットフォームに、政治的ディープフェイクを削除する義務を課す。さらに「下院法案2355」は、AIで生成したまたは改変されたビジュアルを使用した広告を出す選挙陣営に、その開示を義務づける。

マスクは、ニューサム知事がこれらの法案に署名した後、Xの一連の投稿で知事を激しく非難した。彼は再び、コールズが投稿したハリスの動画をシェアし、「信じられないだろうが、ニューサムはこの動画を根拠に、パロディを違法にする法律に署名した」と書き込んだ。

その後、マスクはカリフォルニア州の住民たちに「新たなリーダーシップ」を求め、ハリスのディープフェイク動画を「バイラル化」するようフォロワーに呼びかけた。トランプ元大統領を支持しているマスクはさらに、ハリスを攻撃する右派のアカウントの投稿を拡散し、11月の選挙で民主党が勝利すれば「言論の自由が危険にさらされる」と主張した。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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