ここではビジネス実践的な視点で英語のスキルレベルを定義してみたいと思います。
実戦的英語のレベルは4レベル
英語のスキルレベルをはかる方法として、英語検定やTOEIC、大学入学のためのTOEFLなどが知られています。かつて、TOEICは海外出張や海外赴任の可否を判定するために使われていました。例えば、600点以上であれば海外出張ができ、830点以上であれば海外赴任ができるといった基準を導入していた企業もありました。私は新卒で入社したソニーで米国東海岸の大学に1年間社費留学をさせてもらえました。研究テーマにしていたユーザインタフェースやコンピュータグラフィックスの膨大な最新論文を読むことが日常だった事もあり、読み書きはそれなりのレベルに至ったものの、ビジネスを遂行する上で十分だったかというとそうではありませんでした。
自分の英語力が劇的に向上したのは、プレイステーション事業を立ち上げる際に、海外のいろいろな関係者と侃々諤々の議論をし、ビジネスディールをするようになってからでした。さらにインターネットバブルの隆盛と崩壊の2000年前後にプレイステーションの米国事業で4年ほど技術部門のバイス・プレジデントとして、ほとんど日本語をしゃべる人がいない環境で仕事をした事が大きいと思います。
その後、英語を公用語とした楽天でAIの担当執行役員を務めるなど、英語ベースで仕事をすることが多くなりました。
BIG4の一つである KPMGの日本法人のグループ子会社として、デジタル開発会社を立ち上げて初代社長になった際には、デジタルネイティブ人材を集めた結果、設立後2年ほどで30カ国から130名程の多彩な人材を集めた組織を構築しました。この会社も英語での会話が通例でした。メンバーの出身国が30カ国にもおよぶと、英語の特徴や使用語彙も均質ではなく、それぞれ個性的で、教科書に載っている例文だけでは対応できない状態です。
こういった経験から、私は英語のレベルには4つのレベルがあると考えています。それらはサバイバルレベル、ワーキングレベル、マネジャーレベル、エグゼクティブレベルの4つです。これらについて1つずつ説明しますが、今回の前編ではまずサバイバルレベルの英語力について解説します。