アルテオジェンは今や、同じく韓国の富豪イ・ドンチェの化学品メーカーEcoPro(エコプロ)のバッテリー材料製造部門であるEcoPro BM(エコプロBM)を抑えて、韓国新興市場のKOSDAQで最も時価総額が大きい企業だ。
ソウルの南、テジョンに本社を置くアルテオジェンは、生きた細胞から作られる先発医薬品の廉価版であるバイオシミラー(バイオ後続品)と、既存医薬品の有効性と安全性を高めているバイオベターに注力している。同社はここ数年、薬を静脈内ではなく皮下(皮膚細胞の脂肪層)に投与できるALT-B4という技術でかなりの利益を上げている。
同社が米製薬大手メルクとのライセンス使用許諾契約を発表し、株価が約25%跳ね上がったことを受けて、CEOのパクは2月に初めて富豪の仲間入りを果たした。この契約は、アルテオジェンのALT-B4をメルクのがん免疫薬ペムブロリズマブに使用するためのものだ。「キイトルーダ」として知られるメルクのこの薬は世界で最も売れている処方薬であり、その主な特許は2028年に切れる。メルクとの契約でアルテオジェンは2000万ドル(約28億円)の前払いと4億3200万ドル(約620億円)の成功報酬を受け取る可能性がある。
メルクと契約して以来、アルテオジェンの株価は着実に上昇している。新韓証券のアナリストは7月にまとめたメモで、「米政府のインフレ抑制法を踏まえた薬価引き下げ政策とバイオシミラー市場の拡大により、大手製薬会社は先発薬の皮下投与版の開発に向かっており、バイオシミラー企業は戦略の差別化を模索している」と指摘している。
「メルクとの独占契約に加え、スイス製薬大手ノバルティスの後発薬品・バイオシミラー部門であるサンドとのライセンス外部供給契約の拡大は、アルテオジェンが米国の政策の方向性から恩恵を受ける事業構造を有していることを明確に示している」とも書いている。
アルテオジェンは7月にサンドとの契約を改訂した。契約は元々、2022年12月に締結され、アルテオジェンは最大3つの物質の皮下投与薬開発にALT-B4技術をライセンス提供することで、最大1840億ウォン(約198億円)の成功報酬を受け取るという内容だった。新韓証券のアナリストはメモの中で「改訂された契約では、物質の数が4~5に増え、ロイヤルティとは別に成功報酬は8000億〜1兆ウォン(約862億~約1077億円)と推定される」と述べている。そして、改訂された契約ではALT-B4技術の代わりに、ヒアルロニダーゼを使用するアルテオジェンの新技術を使用する。この酵素は、精子が卵子を取り囲む細胞や粘液の層を溶かすのに関係している。
そしてアルテオジェンは先週、高齢者の視覚障害の主な原因である滲出型の加齢黄斑変性(AMD)の治療薬として、「EYZANFY」という医薬品の承認を韓国で申請したと発表した。
パクは2008年に、同社の最高戦略責任者(CSO)を務めている、米パデュー大学で生化学の博士号を取得した妻とともにアルテオジェンを設立。同社は2014年にKOSDAQに上場した。同大学で同じく生化学の博士号を取得したパクは以前、LG生命科学とハンファ石油化学に勤務し、米マサチューセッツ工科大学の博士研究員の職も経ている。