しかし、生成AIの登場をはじめ、急激な環境変化が起こりつつある現代においては、公務員に求められる仕事のあり方も変化の岐路に立たされている。
「地方公務員が本当にすごい!と思う地方公務員アワード」は、2017年から毎年開催され今年で8回目となるが、今回は11名が受賞。8年で累計92名の地方公務員が選出されている。加えて、今年から新設された30歳以下が対象となる「ネクストホープ賞」には2名の若手職員が受賞を果たした。
協賛団体にはKDDI、NECソリューションイノベータ、楽天、PR TIMES、後援団体にJリーグなどが名を連ねていることからも、地方公務員への注目や期待が社会から高まっていることもうかがえる。
新しい時代に望まれる地方公務員とは、果たしてどのような人材なのだろうか。今回の受賞者を紹介しながら考えていきたい。
公務員の枠を飛び出した仕事人たち
1人目に紹介するのは、堺市(大阪府)の郷田秀章だ。2020年に民間企業と共同で水道アプリ「すいりん」を開発、住民の利便性をはかり、職員の作業効率化も実現した。
また、多数の自治体にそのノウハウを共有し、全国で100万人超がアプリを利用することとなった。そして、このアプリを活用し、全国で初めて公金の電子納入通知書を導入し、同市内で年間1000万円超のコスト減を果たした。水道界全体でも年間数億円が削減されたという。
次に紹介するのは豊田市(愛知県)の橋本一磨だ。役所の26部署60種の債権徴収業務を一元化。6年間で28億円の未収債権を回収した。加えて、一元化した債権を効率的に徴収するため、裁判手続きが必要な債権をまとめて弁護士に委託。
ただ回収するだけではなく、納付相談を通じて生活困窮者の早期発見と生活再建につなげるスキームを創りあげた。さらに、一元化を進めるなかで課題となっていた納付環境を整備するため法律までも改正した。
磐田市(静岡県)の男性保健師である伊藤貴規は、2013年に「静岡県男性保健師の会」を発足させ、男性保健師の悩み相談、情報交換ができる場を創った。
2018年には全国約80名の男性保健師が交流するイベントを開催。これをきっかけに全国の男性保健師約400名が交流できるLINEグループが生まれた。地域によっては男性保健師が1人しかいない職場もあり、心の支えとなっている。
続いて紹介するのは愛媛県の武田亜可理。彼女は入庁3年目に水産研究センターの漁業資源担当となり、月6回早朝に起床し、年間2万尾の魚の市場調査を行った。
また、仕事をしながら福井県立大学に社会人入学、研究テーマを「カタクチイワシ利用方法の再考」とし、漁業者の所得向上を目指す。休日には各地でイベントを開催。水産業の素晴らしさを発信している。