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2024.09.26 16:00

月面探査への挑戦 超小型ロボット開発プロジェクトの鍵を握るコミュニケーションツール

日本初の月面着陸に成功した小型月着陸実証機「SLIM」。その様子を撮影したのが、「SORA-Q(ソラキュー)」の愛称で知られる超小型の変形型月面ロボットだ。そして、SORA-Q開発プロジェクトにおいてコミュニケーションを円滑にしたのが、PDFソフトとしてよく知られるAdobe Acrobatだという。

同志社大学教授の渡辺公貴、タカラトミーの米田陽亮に、SORA-Qプロジェクトについて、アドビの立川太郎に、その開発にAdobe Acrobatが果たした役割について語ってもらった。


──2019年4月に、将来の月惑星探査に必要なピンポイント着陸を目指すプロジェクトが動き出しました。そのなかで、SORA-Qはどのような役割を担ったのでしょうか。

渡辺:ミッションは、低重力環境下での超小型ロボットの探査技術を実証することです。SORA-Qの使命は、月面着陸後に自律的に移動し、走行時のデータを取得しながら、着陸した無人小型月着陸実証機「SLIM(スリム)」を内蔵カメラで撮影。それらのデータを自ら選別し、中継機(LEV-1)を経由して地球に送ることです。

私は、同志社大学に在籍する前はタカラトミーの戦略開発部に所属しており、SORA-Qの開発責任者として、2016年からJAXAと共同研究を始めました。その8年後の2024年1月20日に、SORA-QがSLIMの撮影に成功し、ミッションを成功させたことは何よりもうれしかったですね。

同志社大学 生命医科学部医工学科教授 渡辺公貴

同志社大学 生命医科学部医工学科教授 渡辺公貴


米田:私は2019年から、タカラトミーの技術者としてSORA-Qの開発を担当しています。月面からSORA-Qが撮影したSLIMと月面世界を見た瞬間、これ以上ない喜びを感じました。

あの写真は、地球から約38万km離れた月面に降り立ったSORA-Qがミッションを成功させただけでなく、玩具の技術が宇宙産業に貢献できたことの証でもあります。日本のみならず世界中の未来を担う人たちに、宇宙に対するワクワクを感じてもらえたはずです。

──地球と環境が大きく異なる月面でロボットを動かすともなれば、大きな課題があったのではないでしょうか。

米田:そうですね。小型のSLIMに搭載させるSORA-Qについて、JAXAから指定されたのは、直径80mm以下、質量300g以下でした。しかし、起伏が激しく30度を超えるような凸凹も想定され、さらに月面は地球上の海岸の砂よりも細かな粒子で覆われているため、相対的にサイズが小さいと、走行するだけでもかなり大変です。

渡辺:それでもミッションを達成させるため、走行方法を考えた結果、思いついたのが「車輪の軸をずらすこと」です。

着陸時、SORA-Qは球体から変形し、左右に分かれた外殻が車輪となり、回転することで前進します。そこで、車輪の中心軸を少しずらしてみたところ、砂が多い場所や傾斜地でも、砂をかきながら上れるようになったのです。



渡辺:ヒントは「ウミガメ」の動きです。孵化したばかりのウミガメの赤ちゃんは、左右のヒレで砂を押さえながら移動しているので、砂の上を器用に前進できます。

タカラトミーの恐竜や動物をモチーフにした組み立て式駆動玩具『ZOIDS(ゾイド)』シリーズでも、車輪の軸をずらすことで同じような動きを表現しています。その歩行技術を応用したところ、小型・軽量でありながらもダイナミックに前進できるようになり、砂の凹凸や傾斜を攻略できました。

Adobe Acrobatによる3Dデータの共有で、プロジェクトを加速


──そもそも、SORA-Qはどのような経緯で開発が始まったのでしょうか。

渡辺:きっかけは、2015年にJAXAが募集していた、小型の昆虫型ロボットの研究開発パートナーに、「JAXAと共同であれば面白いものがつくれそうだ」とタカラトミーが応募したことです。そして、2016年から共同開発のパートナーとして手を組むことになりました。

JAXAからブリーフィングを受けた結果、タカラトミーの変形ロボット「トランスフォーマー」の技術を生かした「球体から変形し、月面を歩く球体ロボット探査機」というコンセプトで開発を進めることに。

約1年かけて開発した機体が、2017年7月に行われた評価会で高く評価され、2019年4月からSLIMに搭載するSORA-Qの開発を始動させました。その際、おもちゃ開発のベテラン技術者として、米田さんに参加してもらったのです。

米田:プロジェクト全体はJAXA管轄のもと、タカラトミーはSORA-Qの外観や変形・駆動などの動作面を担当しました。

私は、玩具の技術で宇宙産業に貢献できればという気持ちと、「タカラトミーの歴史のなかで培ってきた玩具技術であれば、月面での走行もできるはずだ」という熱意を持ってプロジェクトに参加しています。

タカラトミー 技術開発部フェロー 米田陽亮

タカラトミー 技術開発部フェロー 米田陽亮

渡辺:もともと、米田さんと私は同じオフィスに勤務していました。まず、米田さんがSORA-Qの3D図面を作成。それを私が米田さんの設計ソフトの画面上で確認したあと、3DプリンターやCNC切削機を利用して試作を繰り返していたのです。

ところが、私が別のオフィスに移動することとなり、米田さんのパソコン上で図面を確認できなくなりました。とはいえ、設計ソフトを使うには高いスペックのパソコンが必要ですし、ソフト自体が高額なため、なかなか導入しづらい状況だったのです。そんなとき、米田さんが「PDFファイルに3Dデータを表示できる」と教えてくれました。

米田:設計ソフト上でPDF形式の3Dデータを出力できることに気づき、「もしかしたら使えるかもしれない」と思って試してみました。そのファイルをAdobe Acrobat Readerで読み込んでみたところ、3Dデータを自由に動かすことができて。離れた場所でも、簡単に図面データをやり取りできるようになりましたね。

渡辺のPC上で見るSORA-Qの3Dデータ。回転、パーツの取り外しや断面図の確認などがAdobe Acrobat上で可能

渡辺のPC上で見るSORA-Qの3Dデータ。回転、パーツの取り外しや断面図の確認などがAdobe Acrobat上で可能

共同開発先に3D図面を共有し、形や動き方を検討していくには、相手にも設計ソフトを用意してもらう必要があると思っていたのですが、Adobe Acrobatで3Dデータを見ることができるとわかったのは、本プロジェクトをスムーズに進めるうえで本当に大きな出来事でした。

渡辺:SORA-Qは、JAXAによって内蔵カメラなどのテストが繰り返されたのち、2023年9月、SLIMに搭載されて宇宙へと飛び立ちました。そして2024年1月20日、月面に着陸したSLIMの撮影に成功したのです。

どこにいてもプロジェクトを円滑かつ効果的に進められる


──今後、宇宙開発においてSORA-Qはどのような活用を期待できると思いますか。

渡辺:新しい宇宙探査プロジェクトでの分離カメラとしての活用が期待できます。JAXAが昆虫型ロボットの研究開発パートナーを募集した背景には、「海外の宇宙開発費と比べて予算が少ない」という事情があります。それを打破するために、小型化した探査機に載せるロボットが必要なのですが、SORA-Qは世界最小・最軽量なうえ、ミッションを果たせることを証明しました。

SORA-Qを探査機に複数台載せて、一部は探査機の撮影を、ほかはカメラによる放射線測定をするなど、冗長性を確保してさまざまなミッションを達成することに役立てるはずです。

──今後の宇宙探査につながる成功を収めたSORA-Qプロジェクトでは、Adobe Acrobatが活用されました。PDFで3Dデータを扱えることを知らない人は多そうですね。

立川:PDFといえば、「文書を見たままのレイアウトで固めて保存するためのファイル形式」というイメージが強いと思います。しかし実際は、さまざまな機能があり、柔軟性が高いフォーマットです。

Adobe Acrobatでは、PDFの作成や編集、PDFを使った共同作業、PDFヘの電子署名やコメントの追加など、できることが本当にたくさんあります。

アドビ 製品マーケティング本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャー 立川太郎

アドビ 製品マーケティング本部 シニアプロダクトマーケティングマネージャー 立川太郎

渡辺:PDFに動画を埋め込むこともできますよね。ただ、3DデータをPDFとして出力することはできるのに、PDF上に3Dデータを埋め込むことはできなくて。それができれば、オンラインのプレゼンなどで、参加者に3Dデータを共有しながら、テキストなどで補足もできて便利なのですが。

立川:たしかに、そうですよね。ぜひ、開発にフィードバックさせてください。ちなみに、Adobe Acrobatには、ほかにもプロジェクト進行に便利な機能があります。

それが、PDFの確認を効率化するための機能です。クラウド上にPDFファイルをアップロードしてリンクを発行すれば、オンラインで素早く共有できます。そのうえ、共有された相手は、アドビのアカウントがなくてもPDFを開き、任意の箇所にコメントを追加することができます。

こうすることで、複数人のフィードバックをPDFに集約でき、対象のファイルを探す手間も省けるので、より業務効率を上げられるはずです。

──Adobe Acrobatには、無償版のAcrobat Readerと有償版のAcrobat Proがありますがどのような違いがあるのでしょうか。

立川:Acrobat ReaderはPDFの表示のほか、コメントの追加などができる無料ツールです。Acrobat Proはそれに加えて、PDFの直接編集や他のファイル形式への変換などの機能が使えるので、文書業務をより効率化することができます。

渡辺:画期的だなと感じたのは、Acrobat Readerでも3Dデータを見られることです。有償機能であれば見られる人が限られますが、どんな人も3Dデータを見られることが大変便利ですね。

立川:誰でも見られるという意味では、パソコンやスマホなどどのデバイスで見ても、レイアウトを崩さずに表示できるのがPDFの大きな特徴です。PDFはファイルサイズが軽く、どのデバイスでも表示しやすい。加えて、長期間の保存にも適したISO規格に対応し、重要なファイルの保管にも向いています。

これらの特徴をフルに活用していただくことで、事業領域や所属の枠を超えてプロジェクトを円滑に進められます。

渡辺:確かに、SORA-Qプロジェクトには、総勢50〜60名ほどのメンバーが参加していました。各社の中には開発者・技術者だけでなく、決裁者や企画系など多様な職種の人が見えないところでかかわっていたと思いますが、どのような相手にも設計変更などを容易に共有できたことは大きかったです。

開発のメンバーと3D データを見ながら話し合い、構造上の変更があれば、米田さんが修正した図面をPDFにして送ってくれるので、すぐ確認できます。Adobe Acrobatがなかったら、意思疎通が遅延していたでしょう。

米田:そうですね。実機が動くさまや、部品を外した時の様子を3Dアニメーションでビジュアル化し、モノづくりに直接関わっていないメンバーに見せることで、基本構造や変更点を説明しやすくなりました。

立川:ありがとうございます。このような重要なプロジェクトでお役に立てて光栄に思います。ぜひこれからも、初めて出合ったパートナー企業等と円滑なコミュニケーションを進めるうえで欠かせないツールとして活用していただければ幸いです。


Adobe Acrobat
https://www.adobe.com/jp/acrobat/roc/information/business-solution.html

Adobe Acrobat×SORA-Q スペシャルムービーはこちら

Promoted by アドビ / text by Kaori Sasuga/ photographs by Yoshinobu Bito / edited by Daisuke Sugiyama(Note,Ltd.)