今年2月、大谷と山本由伸選手を歓迎したチームのミゲル・ロハス選手は、二人に歓迎の意を込めて、直筆の手紙とともに1本のカリフォルニアワインを贈った。この時、プレゼントに選ばれたカリフォルニアワインが「Quintessa(クインテッサ)」のカベルネ・ソーヴィニヨンだ。
同じくチームのスター一塁手、フレディ・フリーマンのお勧めを聞いてチョイスしたというこのワイン。1本約3万円の高級ワインだが、例えば、「オーパスワン」などと比べると意外と知られていないのではないだろうか。一体どのようなワインなのか。先日、新ヴィンテージお披露目のために初来日したワインメーカーの声とともに紹介したい。
「1度も農薬が使われていない」真のオーガニックワイン
「大谷と山本にプレゼントされたこと、2日前に知ったばかりなのよ」と嬉しそうにほほ笑むのは、クインテッサのレベッカ・ワインバーグ氏。日焼けした肌にスカイ・ブルーのワンピースが目に眩しい。レベッカ氏はクインテッサでワインを造り始めて10年目。カリフォルニアでは20年以上のキャリアを持つベテランだ。創業者は、チリの名門コンチャ・イ・トロの元社長アグスティン・フネウス氏と、妻のヴァレリア氏。ナパの心臓部ラザフォードにある土地を見つけ恋に落ちた二人は、1990年にクインテッサを設立した。レベッカ氏が「ナパでもっとも美しい場所」とうっとりと語る畑は、古いオーク樫の木立に囲まれ、鳥のさえずりが絶え間なく聞こえてくるという。
クインテッサは、ナパでは一目置かれる存在だが、それには確固たる理由がある。創業当初よりオーガニックを貫き、カリフォルニアでは珍しいビオディナミ農法を30年近く前から続けているのだ。畑には創業以来一度も化学農薬を撒いていないばかりか、1本たりともブドウ栽培のために木を切り倒さずに、当時の生態系を維持している。
これはカリフォルニアでは非常に珍しいことといえる。サステナブルやSDGsが声高に叫ばれるカリフォルニアでも、ビオディナミ農法は、なかなか浸透していない。なぜなら、天然素材を用いた調合材や、天体の動きまでを考慮してブドウ栽培の作業を決めるビオディナミ農法は、非常に手間もコストもかかり、ビジネスとしては割に合わないことも多いからだ。「多くの人は、自然から享受してばかり。自然に返すという意識はないの」とレベッカ氏は眉根を寄せる。