「ひと口に『モンゴル料理』と言うにはあまりに多様な世界を、日本にいながら体験できる時代をわれわれは生きている。来月、筆者はモンゴルに行くので、唯一東京では味わえなかった、もうひとつのディアスポラの民のグルメであるロシア在住のモンゴル系住民がつくるブリヤートの料理がウランバートルにあるそうなので、味わってみようと考えている」
ブリヤート人というのは、広くモンゴル人というアイデンティティを共有する人たちの中で、ロシア(旧ソ連)領に居住する(orしていた)人たちを意味する包括的な概念である。
現在、彼らはロシアとモンゴル、中国に分かれて住んでおり、彼ら自身もディアスポラ(民族離散)の民なのである。ちなみに中世モンゴルの歴史書である「元朝秘史」で「森の民」と呼ばれた人々の一部がブリヤート人だと推定されており、その後、モンゴル帝国を築いた「草原の民」とは区別されている。
では、ブリヤート人というのは、いったいどのような人たちなのだろうか。
羊肉ではなく牛肉を使う料理
7月に訪ねたウランバートルで、現地の食事情に詳しい2人の日本人に案内されたのが、ブリヤート料理店「アンガラレストラン(Ангара ресторан)」だった。![店内には縦書きのモンゴル文字の書道の掛け軸が飾られている](https://images.forbesjapan.com/media/article/73774/images/editor/938ea64828f25f0b5810d3801b1a50c75f157e5f.jpg?w=1200)
「アンガラレストラン」が選ばれたのは、オーナーであるブリヤート人女性のチェレンハンドさんが、2人と旧知の仲だったからだ。
![ウランバートル在住のブリヤート人で「アンガラレストラン」のオーナーのチェレンハンドさん](https://images.forbesjapan.com/media/article/73774/images/editor/7b895aa3f31682a69ea9332c509178ae4f589e62.jpg?w=1200)