「我々のゴールは、業界の新たなスタンダードを確立し、より安全でセキュアな暗号資産コミュニティを作ることだ」と、トロン創業者のジャスティン・サンは述べている。
USDTのようなステーブルコインは、暗号資産市場の活力源であり、日常的なトランザクションから機関投資家によるものまで、あらゆる取引にに流動性を提供している。現状で時価総額が1180億ドル(約16兆7000億円)を超えるUSDTの半分以上がトロン上で流通しているが、この規模と使いやすさが犯罪者たちをも惹きつけている。T3 FCUは、データとテクノロジーや法執行機関との協力関係を活用することで、違法行為を防止しようとしている。
TRMラボCEOのエステバン・カスターニョによると、この取り組みは3社による長年のパートナーシップの延長線上にあるという。「我々は、ブロックチェーンインテリジェンス企業として、初めてトロン上の違法行為のマッピングを開始し、2019年からこの分野で提携している。この構想は、それをさらに推し進めるものだ」と、彼は述べている。
トロンは、8月時点で2億4700万件以上のユーザーアカウントをホストし、80億件以上のトランザクションを処理したと公表した。しかし、トロンのメリットである手数料の安さや安定性、使いやすさは、テロリストやマネーロンダリングを行う犯罪者、詐欺師なども惹きつけている。TRMラボが4月に発表したレポートの『Illicit Crypto Economy』によると、USDTはステーブルコインの中で違法取引量が最も多く、2023年には総量の1.63%に相当する193億ドル(約2兆7300億円)に達したという。もう一つの主要なステーブルコインであるUSDCの違法取引量は、総量の0.05%である4億2890万ドル(約607億円)だった。
TRMはまた、昨年は違法な暗号資産取引の45%がトロンのブロックチェーンで行われ、2022年の41%から増加したことを明らかにした。これに対し、イーサリアムは24%、ビットコインは18%だった。2023年3月に米証券取引委員会(SEC)は、トロンに関連するTRXとBTTのトークンに関わる未登録の売り出し、販売、市場操作の疑いで、同社の創業者であるサンと彼が経営する3つの会社を訴えた。サンの弁護団は、この主張はSECの管轄外であるとして争っている。