暗号資産

2024.09.19 11:00

ステーブルコイン「USDT」の違法取引撲滅目指す3社連合が始動

T3 FCUは、こうしたリスクの高まりへの対応策として7月に発足した。TRMのブロックチェーンインテリジェンスが疑わしい行為を特定してフラグを立て、それに基づいてテザーとトロンのチームが措置を取る。3社は、1200万ドル(約17億円)以上のUSDTに関連した違法行為を既に防止している。これまでに11名の被害者が確認されているが、調査が進むにつれてさらに増える見込みだ。

世界規模の取り組み

TRMのグローバル調査責任者であるクリス・ジャンチェフスキは、このコラボレーションの規模の大きさを強調し、次のように述べた。「我々が最初に成功した3件の違法行為取締まりにおいては、英国、米国、豪州の機関が関与した。このような活動には、世界規模での取り組みが必要であり、我々が協調体制を取ることで、今後数カ月から数年の間に非常に大きな影響を与えることになるだろう」

テザーCEOのパオロ・アルドイノは、このシステムが犯罪に対応するスピードの速さを強調する。「ブロックチェーン上の資産を凍結するのに要するのは数分だ。それに対し、銀行強盗が司法権の異なる別の州に送金した場合の法的な対応の遅れを想像してみてほしい。T3グループは、ブロックチェーン分析会社、ブロックチェーン開発会社、ステーブルコイン発行会社の3者がブロックチェーンの安全性向上を目指してコンソーシアムを設立し、犯罪の情報を受け取ってから行動を実行するまでの時間を短縮することに取り組んでいる。伝統的な国際金融システムでこのような取組みは見当たらない」と彼は言う。

先日はテレグラム創業者のパヴェル・ドゥーロフが、違法取引を可能にするプラットフォームへの加担や法執行機関への協力の拒否などの容疑によりパリで逮捕されたこともあり、このタイミングでのコンソーシアムの結成は注目に値する。アルドイノとサンは、ドゥーロフを公に支持しているが、自らのコンプライアンスへの取り組みには自信があると述べている。「我々は、40カ国で140もの法執行機関と協力している」とアルドイノは話す。

TRMのカスターニョは、このコラボレーションの将来的な成果を楽観視している。「この取組みは、暗号資産の可能性を広げるものだ。我々は、暗号資産のリスクを軽減する方法を探している段階にあり、そのために技術の利用を始めたばかりだ」と彼は述べている。

TRMラボによると、不正な暗号資産取引のボリュームは全体の1%未満とまだ少ないが、カスターニョはこの数字をゼロに近づけるチャンスがあると考えている。「これは、その目標を実現するための重要な第一歩だ」と彼は語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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