この資金は、昨年3月に設立された同社の「生成AIファンド」に投入される。このファンドは、OpenAIが提供するChatGPTのデビューの数カ月後に始動したもので、当初は2億5000万ドル(約353億円)で始まったが、3カ月後に5億ドル(約707億円)に増額されていた。セールスフォースは、その投資額をさらに倍増させた。
「我々は、最初の2億5000万ドルを非常に速いペースで使い切り、18カ月間で5億ドル全額を使い切った」と、セールスフォースベンチャーズ総責任者のジョン・ソモルジャイは語った。
同社は、このファンドを通じてAnthropic(アンソロピック)やCohere(コヒア)、Mistral(ミストラル)、Hugging Face(ハギングフェイス)などのAIスタートアップへの投資を行っており、前回の5億ドルもすでに二十数社のAI企業に投じられたという。
セールスフォースのこの発表は、AIへの投資が驚くべき規模に達する中で行われた。OpenAIは評価額約1500億ドル(約21兆円)で約65億ドル(約9192億円)の資金調達を検討中と報じられている。AI推論技術のリーダーであるGroq(グロック)は、昨年の売上がわずか340万ドル(約4億8000万円)であるにもかかわらず、8月に6億4000万ドル(約905億円)を調達した。また、GitHubの元CTOが設立したAI企業Poolside(プールサイド)は、製品のリリース前に30億ドル(約4242億円)の評価額で5億ドル(約707億円)の調達を検討中と報じられている。
セールスフォースベンチャーズは、新たな5億ドルの配分をすでに始めているが、対象企業については明らかにしていない。今回の追加投資の発表は、19日から開催されるセールスフォースの年次会議Dreamforceに先駆けて行われた。
2009年に始動したセールスフォースベンチャーズは、セールスフォースの製品との統合を構築するスタートアップへの投資を目的に設立され、初期の投資先には、現在の時価総額がそれぞれ115億ドル(約1兆6260億円)と48億ドル(約6787億円)のDocusign(ドキュサイン)やBox(ボックス)が含まれていた。同社は、生成AIファンドの立ち上げの以前から、データインテリジェンスプラットフォームのDatabricks(データブリックス)などのAI企業への投資を行っていた。
「このファンドは、優れた起業家を支援する機会を私たちに与えるもので、AIのイノベーションをグローバル市場に届けるためのものだ」とソモルジャイは語った。
セールスフォース創業者でCEOのマーク・ベニオフも、生成AIファンドの投資プロセスに深く関与しており、「一定の額を超える投資にはすべて彼の承認が必要だ」とソモルジャイは述べたが、ベニオフが関与する投資の規模については明言を避けた。また、ベニオフは、アンソロピックCEOのダリオ・アモデイやコヒアCEOのエイデン・ゴメスとも面会するなど、エヌビディア創業者のジェンスン・ファンとも似たトップダウンのアプローチをとっている。
(forbes.com 原文)