アップルは、欧州連合(EU)のデジタル市場法(DMA)の影響で、生成AIのApple Intelligenceを、欧州の全てのiPhoneから取り除くという苦渋の決断を迫られた。同社は、欧州当局からの明確な指針がない限り、ヨーロッパのユーザーにこのソフトウェアを提供することを拒否している。
欧州におけるiPhoneの販売は堅調で、2021年には5610万台、2022年には5600万台、2023年には5680万台を記録していた。これは米国の販売台数の半分から3分の2程度に相当する。Apple Intelligenceは、初期の段階で米国英語のみに対応し、一部の機能は2025年第1四半期にずれ込むため、このソフトウェアが欧州市場に対応しないことは、すぐには打撃とはならない見通しだ。
しかし、この決定によりアップルは不利な立場に置かれることになる。グーグルのGemini AIやサムスンのGalaxy AIなどの生成AIは、ユーザーの匿名データを集めて製品を改善しながら、継続的なアップデートを提供している。Gemini AIは8月のPixel 9シリーズの発売と共に展開され、Galaxy AIの次期バージョンは来年1月にリリースされる。しかし、アップルは欧州のユーザーに、Apple Intelligenceを届けることができないのだ。
EUは、iPhoneとiOSが欧州市場で支配的な役割を果たしていることを理由にアップルを「ゲートキーパー」に位置づけている。アップルは、EUの域内においてサードパーティ企業が自社のサービスと連携できるようにし、これまでの「囲い込み」を取り除くことを義務付けられている。
同社は、DMAの規制上の不確実性を理由に、iPhoneのミラーリングやSharePlayの画面共有、Apple Intelligenceの3つの機能を年内にEUのユーザーに提供することは不可能だと考えていると今年6月に発表した。
Apple IntelligenceがDMAの規制要件に該当する場合、アップルはiOSを他の生成AIソフトウェアと連携可能にし、ユーザーが自分のデバイスで使用するAIソフトウェアを選択可能にすることを求められる。アップルは、「DMAの相互運用性に関する要件が、ユーザーのプライバシーとデータセキュリティーを危険にさらすような形で、当社製品の完全性を損なわざるを得ないことを懸念している」と述べて、このAIツールのEUにおける提供を延期した。
この決断は、欧州市場におけるiPhoneをAndroidの競合に比べて不利な立場に置くことになる。
(forbes.com 原文)