ここで、見過ごせない疑問が生じる。政治的事実と虚構を見分ける能力は、リベラル派も保守派も変わらないのだろうか?
実験心理学の専門誌Journal of Experimental Psychologyに先ごろ発表された研究論文では、米共和党員と民主党員の「メタ認知の非効率性」を測定することで、この疑問に答えようと試みている。
メタ認知の非効率性とは何か?
メタ認知能力とは、基本的に「思考について考える」能力のことだ。2021年に学術誌Psychological Reviewに掲載された論文によれば、メタ認知能力を活用すると、自らの決断、信念、思考の正確さを自信の度合いから判断できる。平たく言えば、メタ認知とは自分がどれだけ正しいかを客観的に評価する精神的なプロセスである。しかし、誰もがメタ認知能力に秀でているわけではない。時として自分の考えや決断に過剰な自信を抱いてしまうこともあれば、全く自信が持てないこともあり、その自信の程度が実を伴わないことすらある。自信が現実を上回ったり、下回ったりするこのミスマッチを「メタ認知バイアス」と呼ぶ。
自信があっても、その自信が判断の正しさを正確に反映していない場合、自信満々で判断を誤ったり、正しくないことを信じてしまったりする。要するに、私たちの自信のほどは、本当に自分の判断の正誤を示しているのか、ということだ。これを「メタ認知感度」という。
メタ認知バイアスとメタ認知感度の相互作用により、心理学者が「メタ認知の非効率性」と呼ぶ状態が生じる。そして、この非効率的な「思考についての思考」は、日常生活において思いのほか頻繁に起こる。
たとえば、友人と議論しているとしよう。あなたは自分の主張する「事実」が正しいと確信しているが、情報源を再確認する手間はとらない。その確信が情報の正確さと一致していない場合、あなたはメタ認知の非効率性に陥っている。逆に、確信がなくても事実確認をして自分の主張が正しかったとわかれば、メタ認知が効果的に機能していることになる。