リベラル派と保守派のメタ認知能力
メタ認知能力は、とりわけ政治的な文脈において、事実に基づく情報と誤った情報を区別するのに極めて重要な役割を果たす。メタ認知能力には、自分が何を知っているかを自覚するだけでなく、その情報が現実と一致しているかどうかを自信を持って評価する能力も含まれる。政治に関する誤情報が世界中の民主主義に及ぼす深刻な脅威と、選挙が目前に迫っている点を考えると、リベラル派と保守派のメタ認知能力の違いは研究すべき重要分野だが、意外にもこれまであまり注目されてこなかった。
そこで、心理学者の研究チームが調査に乗り出した。本稿冒頭で言及したJournal of Experimental Psychology掲載の論文では、さまざまな政治的志向を持つ米国人1000人以上を対象に、半年間の縦断研究を実施。広く流布している政治情報について、事実に即した内容か、誤解を招く内容かを参加者に評価させ、虚実を見分ける能力を測定した。
その結果、右派も左派も、正確な情報と誤った情報を区別する能力についてはおおむね自覚していることがわかった。しかし、大きな違いも明らかになった。共和党員や保守派の人々は、民主党員やリベラル派に比べて、メタ認知的洞察力が著しく低かったのだ。特に、問題となっている情報が自分のイデオロギー的信念に反するものである場合、この傾向は顕著だった。
この研究結果には、平均的にみて、保守派の人々が自身の判断に対して持っている自信は、対象となる情報が本人の政治的見解と対立する場合には、真実性の評価の点で正確さに欠ける可能性があることが示唆されている。対照的にリベラル派は、自らのイデオロギーに反する情報に直面したときでも、自信と正確さを一致させることにやや長けていた。
このメタ認知効率の差は、大統領選の投票日が近づくにつれ勢いを増す情報の洪水の中で、さまざまな政治集団がどのように振る舞うかを大きく左右すると考えられる。