欧州

2024.09.15 10:00

ウクライナ軍がクルスク州に新たな越境攻撃 ロ軍の反撃を牽制か

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ロシア西部クルスク州でウクライナ側が支配下に置く約1000平方kmの突出部から西へ30kmほどの両国国境地帯で、ウクライナ軍の工兵部隊が12日、ドローン(無人機)や戦車の支援を受けながらロシア側の防御線を突破するという大胆な行動に出た。

ウクライナ軍が8月6日に仕掛けたクルスク州への奇襲侵攻の小規模版とも言える新たな奇襲作戦は、ドローンから撮影された短い映像数本という当初の証拠からうかがわれるよりも、はるかに大きな成功を収めていたようだ。
当初の証拠では、ウクライナ軍部隊は砂堤や塹壕、コンクリート製の対戦車障害物(いわゆる「竜の歯」)などから成るロシア側の国境防御線を突破したものの、そこからほど近い場所でロシア軍のより頑強な抵抗に遭ったようだった。ロシア国防省はウクライナ側の攻撃を「陸軍航空隊と砲兵射撃の支援で」撃退したと主張していた。

突破作戦を支援したウクライナ軍のドローン部隊「コーン・グループ(Khorne Group)」はロシア国防省の主張を否定し、この作戦に関する本メディアなどの報道を批判した。ロシア国防省の主張を引用した記者らについて「情報不足でヒステリーを起こしているか、金をもらってロシアびいきの心理戦に加担している」と主張した。

ウクライナ軍による侵入がすぐに撃退されたのではなかった証拠として、コーン・グループはより長い映像を公開した。映像には、ウクライナ軍の装甲車両の車列が突破口から突き進み、ウクライナとの国境から5kmほどのクルスク州ベショロエ村に向かう道路を疾走している様子が映っている。
少なくとも1両の装甲車両が損傷したようだが、ほかの車両はそばに砲弾が着弾するのにも構わずベショロエ村の南の端まで侵入している。

ウクライナ軍部隊が12日あるいは13日にさらに前進したのかは不明であり、14日になってもベショロエやその近辺にとどまっていたのかもわからない。

「ロシア兵1000人超に包囲迫る」と主張

コーン・グループは「われわれはロシアの新たな地域に何kmも進撃した」と力を誇示し、「1000人以上のロシア徴集兵部隊が包囲に瀕している」とも主張した。この主張は現時点で独自に検証できていない。

とはいえ、はっきりしているのは、ウクライナ軍が12日に少なくとも数時間は、このひと月あまりで2回目となるロシアへの侵攻を行ったということだ。これは、ロシア軍がクルスク州のウクライナ側突出部に対して反撃を開始した翌日のことだった。ロシア側はこの反撃で、これまでに突出部の縁あたりの数集落を奪い返している。

ウクライナ軍によるベショロエ方面作戦が、クルスク州の突出部一帯で続く両軍の混沌とした戦闘のダイナミクスにどのような影響を与えるのかは見通せない。ウクライナ側にとっては、この新たな越境攻撃によって、ロシア軍が東方で進めている反撃を牽制し、兵力の分散などを誘うというのが最善のシナリオだろう。

反対に最悪のケースは、ロシア国防省の主張どおり、ウクライナ軍部隊はベショロエ方面に一時的に侵入したものの、すでに退却に終わったというものだ。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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