少なくとも突出部の左翼の2方向、右翼の1方向からのロシア側の反撃に関して、ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトはレポートで「多くの人」を驚かせたと述べている。だが、ウクライナ陸軍の第27ロケット砲兵旅団はこれに驚かなかった。第27ロケット砲兵旅団は、ウクライナ軍で現在40機弱あるとみられる米国製高機動ロケット砲システム(HIMARS)を配備されている唯一の部隊だ。
ウクライナ空軍第14無人航空システム連隊のドローン(無人機)が上空から監視するなか、ロシア軍の1個小隊が、突出部の北西の境界線になっているセイム川の岸にトラック数台で乗りつけた。計数十人の歩兵が下車し、事前に工兵部隊によって仮設されていた浮橋(ふきょう、ポンツーン・ブリッジ)を大急ぎで渡った。
The 14th Regiment of Unmanned Drones used HIMARS with cluster munitions to target a large concentration of Russian troops in the Kursk region. These enemy units were gathering in preparation for assaulting Ukrainian positions. pic.twitter.com/KfkoSisw7Q
— NOELREPORTS 🇪🇺 🇺🇦 (@NOELreports) September 12, 2024
第27ロケット砲兵旅団のHIMARSは、そこに向けて射程90kmでGPS(全地球測位システム)誘導のM30/31ロケット弾を数発発射した。M30/31は空中で炸裂し、擲弾(てきだん)サイズの子弾各400発以上がロシア兵らの上に降り注いだ。
結果は凄惨なものだった。浮橋を渡った先で露出していた部隊はロケット弾2発で被弾した。生き残った兵士らは近くの樹林帯に隠れようとしたが、その真上で3発目が炸裂した。ロシア側に何人の死傷者が出たのかは不明だが、ドローンのカメラは砲撃前に30ほどの動く人影を捉えていたのに対し、砲撃後は10ほどに減っている。
第27ロケット砲兵旅団はロシア軍による突撃のひとつを撃退できたのかもしれない。しかし、ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)の12日の作戦状況評価などによると、ロシア軍は突出部右翼のウラノク村を取り戻しているほか、左翼のスナゴスチ村周辺でもいくつかの村を奪還した。ただ、左翼側の一部ではウクライナ軍の第22独立機械化旅団などが反撃し、ロシア軍の前進を阻んでいるもようだ。