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企業家、テクノロジー、ビジネスをカバーするジャーナリスト。

Jessica Rinaldi for The Boston Globe via Getty Images


太古の昔から人類はリンゴ酒をたしなんできた。イギリスではサイダー、フランスではシードルの呼び名で大衆に親しまれているこの飲み物は、アメリカでもかつては人気を博したものの、20世紀以降はすっかり忘れられた存在だった。それが今、「ハード・サイダー」という名前で大々的な復活を遂げている。(米国ではアルコール分を含まないリンゴジュースと区別するために頭にhardをつけて呼ばれる)

デイヴィッドとロバート・コーツの親子が2013年に創業したSonoma Ciderは、このブームに乗って急成長しているブランドの一つだ。カリフォルニアワインの生産地として有名なソノマ郡に醸造所を構える同社の看板商品は、西海岸産のオーガニックのリンゴを使ったハード・サイダー。昨年は売上高190万ドル(2億3,550万円)を記録し、今年は430万ドル(5億3,290万円)を見込んでいる。

コーツ親子は、何年もの間、ハード・サイダーのビジネスを立ち上げる機会を狙っていた。「英国並みの認知度になる日が来るだろうと信じていた」と父のデイヴィッドは言う。

もっとも現時点では、英国のビール市場の15%をハード・サイダーが占めているのに対し、米国ではビールの市場規模317億ドル(3兆9,280億円)のうちハード・サイダーは3億6600万ドル(453億6,000万円)と1.2%以下に過ぎない。しかしシェアは年々伸びている。
「2012年半ばから急激に伸びた。クラフトビールの先駆者ボストン・ビール社がハード・サイダーAngry Orchardを売り出したことや、Woodchunk(1991年からあるハード・サイダーのブランドで2012年に大手C&Cに買収)が大掛かりな広告を打つようになったことが大きい」とデイヴィッドは分析する。
調査機関IRIによると、2013年から2014年にかけてハード・サイダーの売上は75.4%も上昇している。これはビール市場においてクラフトビールに次ぐ成長率だ。

消費者がハード・サイダーを求める理由は何か。
「背景にはグルテンフリーダイエットの流行がある」と言うのは息子のロバートだ。
「クロスフィット(米国で流行中のフィットネスプログラム)、パレオダイエット(旧石器時代の食生活を取り入れたダイエット)、炭水化物やグルテン抜きなどを実践している人たちに受けている」

一方、デイヴィッドは1980年から2000年の間に生まれたミレニアル世代のクラフトブームを挙げる。クラフト(craft)とは技能や手工業を意味し、小規模の醸造所で職人が丹精込めて造った酒類がクラフトビール、クラフトワイン、クラフトバーボンなどと呼ばれるようになって久しい。「かつてハード・サイダーはビールを飲めない女性がパブで頼むドリンクだった。今はクラフト酒の一種として受け入れられている」

醸造家として数々の受賞歴を誇る60歳のデイヴィッドは1980年代にCordtz Brothers Cellarsでワイン造りを始め、Fetzer Vineyards、Schramsberg Champagne Cellars、Ace Ciderといった著名なワイナリーやサイダリーでキャリアを積んできた。また1999年には、スパークリングジュース(果汁100%の炭酸飲料)の会社Sonoma Sparklerを設立。そしてコンブチャ(かつて日本でも紅茶キノコの名で流行った発酵飲料)のメーカーVibranzの創業者CEOでもある。

30歳になるロバートは14歳の頃から父の仕事を手伝っている。機械の扱いは父よりも巧い。「機械の調子がおかしくなると、父はまずハンマーを握るんだ」と笑う。

これまでにSonoma Ciderは900万ドル(約11億円)の資金を調達しており、この7月のシリーズBラウンドでは投資家集団のSand Hill AngelsやPixelworksの共同創業者ボブ・グリーンバーグなどから新たに300万ドル(約3億7千万円)を調達する予定だ。

潤沢な資金と需要の高まりに支えられ、Sonoma Ciderは来年半ばには黒字転換するとみられている。今年に入り、製品ラインナップが基本の3種類(こだわりのリンゴブレンド、梨風味、バーボン風味)にハバネロとライム風味などの期間限定フレーバーが加わった。いずれも「香りが豊かで力強い味がする」オーガニックのリンゴを使っている。非オーガニックのリンゴで醸造する場合に比べてコストが3割増しになるが、原料の品質には妥協しない。

また、醸造タンクを増設した他、営業担当者を新たに雇い入れた。ソノマを訪れるワインツアーの観光客向けに醸造所内にバースペースを設ける計画も進んでいる。

彼らのビジネスには障害もある。そのうちの一つは全米のハード・サイダーメーカーが抱える問題で、複雑な税法に縛られていることだ。たとえばハード・サイダーとして売るためには商品のアルコール度数を7%以下に抑えなければいけないが、リンゴの糖度は個体によって大きく異なるため、アルコール度数を一定に保つことは難しい。さらには炭酸含有率やリンゴ含有率についても厳しい基準が定められている。全米サイダーメーカー協会の委員であるデイヴィッドはこの状況を変えるべく、上院で審議中のサイダー投資開発減税法案(CIDER Act)のロビー活動も行っている。
「この法案が通れば、サイダー業界はますます発展し、我々がリンゴを仕入れる全国の小規模農園も潤う。年内には可決されることを願っている」

文=カーステン・シュトラウス(Forbes)/ 翻訳編集=海田恭子

 

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