キーウの将軍たちはポクロウシク方面のために数個旅団を温存していた。最近ようやくこれらの予備部隊を同方面に投入し、ロシア軍の進撃を押しとどめるとまではいかなくとも遅らせてはいる。しかし、西側製戦車や歩兵戦闘車両を装備する精鋭の複数の空中強襲旅団を含め、最も優れた予備兵力のほとんどはクルスク州に送り込んでいる。
そして現在、クルスク州に入っているこれらの部隊は、ウクライナ北東部スーミ市から伸びる補給線の先端付近でロシア軍の攻撃を受けている。
戦線の状況は流動的だ。ウクライナのシンクタンク、防衛戦略センター(CDS)の10日の作戦状況評価によると、ロシア軍はクルスク州方面で東側のウラノク村を奪い返した。一方、ウクライナ軍は西側のスナゴスチ村を失うおそれがありながら、この村の南西方面で攻撃を続けている。
ポクロウシク方面では、ロシア軍が引き続きウクライナ軍の防御を少しずつ削っている。CDSは「ポクロウシク方面の南部の状況は依然としてきわめて厳しい」と評価し、「敵はこの方面で数的優位を確立している」と言及している。
ウクライナ軍がクルスク州に侵攻して5週間あまり経過するなか、侵攻の決断がウクライナにとって正しいものだったのかについてはなお議論の余地がある。侵攻部隊がクルスク州で持ちこたえれば、ウクライナは将来、ロシアと和平交渉に入った場合に、同州の支配地域を取引材料にできるかもしれない。しかし、もし侵攻部隊がロシア軍の反撃に圧倒され、クルスク州の支配地域を失えば、ウクライナはこの侵攻作戦で何を得たことになるのだろうか。
英外相のヒーリーは「明らかなことが2つある。ウクライナが東部戦線の自軍側を強化する必要があること、そしてウクライナがクルスク州で支配領域の保持をめざしていることだ」と述べている。だが、ウクライナ軍が現在の兵力でこれら2つを同時に行えるのかは不透明だ。
(forbes.com 原文)