しかし、バイトダンスも大きな問題に直面している。2021年の辞任を発表する書簡の中で、自身を「あまり社交的ではない」と評した控えめな張は、大学時代のルームメイトで、同社で長年勤務し、以前は人事部長を務めていた梁汝波(リャン・ルーボー)に経営の指揮を託している。裁判所の文書によると、張は現在シンガポールに住んでいる。
バイトダンスは、4月にジョー・バイデン米大統領が署名したTikTokの禁止または売却命令を巡り、米国最高裁判所で争っている。この命令は、バイトダンスに対し、来年1月までに大人気アプリTikTokを売却するか、禁止に直面するかを選択するよう迫るものだ。米国の議員たちは、中国企業によるTikTokの所有が国家安全保障上のリスクをもたらすと主張している。
このような不確実性とIPOの見通しが暗い中で、Coatue Managementのようなフィリップ・ラフォンのベンチャー企業など、バイトダンスの投資家の一部は、非公開市場で保有株の一部を売却することを検討していると伝えられている。ラフォンはバイトダンスの取締役会を退任し、フランスの通信大手Iliadを所有するザビエル・ニールが後任となった。
バイトダンスは海外で課題に直面しているものの、国内事業は比較的順調だ。米国に拠点を置くブローカーのRainmaker Securitiesの共同創業者でCEOのグレン・アンダーソンは、「驚くほど収益性の高い」中国事業こそが、バイデン大統領が禁止または売却命令に署名した後も、投資家がバイトダンスの評価を引き下げなかった理由だと述べている。
ブルームバーグの報道によると、バイトダンスの売上高は2023年に前年の800億ドル(約11兆4000億円)から1200億ドル(約17兆1000億円)に増加し、利払い前・税引き前・償却前利益は2022年の約250億ドル(約3兆5600億円)から400億ドル(約5兆7000億円)以上に急増したと伝えられている。同社は、中国国内で7億人以上の日次アクティブユーザーを抱えるTikTokの姉妹アプリ抖音(Douyin)に掲載されるデジタル広告から収益を得ている。
(forbes.com 原文)