証拠が必要であれば、2024年春にスウェーデンで行われた演習、スイフト・レスポンス(Swift Response)2024を見ると良い。特殊部隊の工作員たちは、戦場で優位に立つため、最新の破壊的サイバー戦術を採用した。整然と作戦に従事するグリーンベレーのハッカーたちの標的にされた相手は、すぐに面倒な事態に陥る。
アルファ作戦分遣隊(Operation Detachment Alfa:ODA/Aチーム)のある兵士は、作戦についてこう説明している。「標的から発信されるWi-Fiネットワークへのアクセスを得て、その場所から行われる活動を、一定期間にわたって監視する。(中略)こうした『もう一つの目』を得ることで、我々の目的を、より明確に描きやすくなる」
特殊作戦部隊の5つの真実
ティム・ビアリー一等軍曹は、米陸軍のウェブサイトで、特殊作戦部隊の「5つの真実」について紹介している。1991年にジョン・コリンズ陸軍(退役)大佐が明確にした原則だ。1. 人間はハードウェアより重要
2. 量より質
3. 特殊作戦部隊は大量生産できない
4. 有能な特殊作戦部隊は、緊急事態が発生してからつくることはできない
5. ほとんどの特殊作戦は、特殊作戦部隊外からの支援を必要とする
これらの真実は決して陳腐化しておらず、進化している。このことは、1番目の真実を見れば明白だ。人間が最も重要なことにはもちろん変わりはないが、5つの真実が書かれてから33年が経つなかで、ハードウェアは見違えるほど変化した。
ビアリー一等軍曹は、「サイバー空間は、戦場の重要な一部になった」と述べている。「そして瞬く間に、戦場での優位性において、物理的な空間と同じくらい不可欠な存在になった」
スイフト・レスポンス2024演習で、敵の建物をハッキング
スイフト・レスポンス2024演習では、特殊部隊のAチームが標的の建物を特定した。チームはその後、建物のネットワークのWi-Fiパスワードをハッキングし、建物内のデバイスの弱点を突いた。「これによりAチームは、建物内の監視カメラ、ドアロック、そのほかのセキュリティシステムを操作できるようになった」とビアリー一等軍曹は説明する。
攻撃側にとっては、重要な情報を集めるだけでなく、標的の環境をコントロールできる能力がとてつもなく有利であることは、孫子レベルの天才的な軍略家でなくても理解できるだろう。この演習では、あるチームが建物のハッキングと操作を担当し、別のチームが物理的な潜入作戦を担当した。
後者のチームは、パラシュートで自由降下した後、合わせて7マイル(約11キロメートル)以上を進んで標的に到達しなければならなかったが、監視カメラのない無施錠状態のドアから、建物に入ることができた。「そして、信号妨害装置を設置し、攻撃の痕跡を消し去ってから建物を出た」とビアリー一等軍曹は述べている。
サイバーチームは作戦全体を監視し、潜入チームの行動をリアルタイムで確認していた。気付かれることなく標的の環境をコントロールする能力は、まさにゲームチェンジャーと言える。
(forbes.com 原文)