事業承継総合メディア「賢者の選択 サクセッション」から紹介しよう。(転載元の記事はこちら)
前編:病に倒れ、後継者はバイト出身者 イケウチオーガニックのアトツギ戦略
アパレルとは違う「熱烈ファン」
──池内代表の「お客様」を見据えた姿勢からか、ファンの熱量も非常に大きいですよね。2023年2月、有志の方が京都市営地下鉄烏丸線に「イケウチオーガニック70周年おめでとうございます」と応援広告をサプライズで出稿されたとか。
池内 驚きのあまり、呼吸困難を起こしました(笑)。全部で3枚ありまして、現在は譲り受けたものを、工場と検品の作業場、あとは一般の方も見られるようにファクトリーストアに飾っています。ファンの方から「池内代表ではなくて、職人さんから見えるところに飾ってください」と言われまして。地下鉄のフレームとまったく同じもので額装して、車内での風景を完全再現しました。
阿部 本当にありがたいことです。こんなに熱いファン、なかなかいないですよ。以前アパレルに務めていた時とは、温度感がまったく違う。ストアに立っていてもお客様と距離が近いのを感じます。何度もお越しいただいている方もたくさんいらっしゃいますから。
客の反応が会社を動かしている
──ファンとの意見交換も盛んだそうですね。池内代表による対面のトークイベントも各店舗で開催されています。阿部 池内は現場でお客様と向き合うことで、生の空気を読み、掴んでいるんです。我々社内の人間もまったく知らないような構想すらお客様に開示し、その反応で方向性を決めています。
池内 実際にお客様に見せて、「これはダメだ」と発売を取りやめた商品もあります。ファンの皆さんはね、僕の動かし方を熟知しているんです。僕がムッとした時は「ああ、これは気にしているポイントだから何か答えを出してくるぞ」と。「怒らせたらやってくれる」とわかっている(笑)。
──お客様との関係性、生のやり取りを大切にしているのですね。
池内 そこにしか自分の判断軸がないんですよ。
阿部 私は池内と違って、どうしても在庫効率や資金繰り、利便性を考えてしまうんです。そうやって数字で見える軸で判断すると、想いが乗った商品は外に出ていかず、ブランドがどんどん薄まってしまう。
だから、池内が商品を考えてリリースするときには、私も含め社員の意見は聞かない方がいい。池内のアイディアを「どうやってお客様に知っていただくか」「長いスパンで主力商品に成長させるか」を考えるのが我々の仕事です。