トリドールの今年3月までの1年間の売上高は、過去最高の2320億円でそのうちの38%が海外からだった。純利益は48%増の57億円で、円安による海外からの利益の増加が寄与した。フォーブスは、昨年8月にビリオネアの仲間入りを果たした粟田の直近の保有資産を11億ドル(約1560億円)と試算している。
トリドールは、2028年3月期の売上高を4200億円に増やし、そのほぼ半分を海外から得ることを目指している。この目標の達成に向けて同社は、店舗数を4900店に倍増させ、そのうち3000店を海外で展開する計画だ。粟田は、今後の3〜5年で海外収益の比率が60%に近づくと見込んでいる。
トリドールの旗艦ブランドである丸亀製麺は、海外では「MARUGAME UDON」の名称で約264店舗を展開中で、ハワイやプノンペンにも店がある。現地の味覚を重視する粟田は、インドネシアではスパイシーなスープを、米国ではサラダやフライドチキンを添えた冷やしうどんを提供している。
海外での店舗の拡大を目指すレストランチェーンは多いが、粟田は成功の秘訣を知っている。「私たちは、さまざまな工夫を凝らして顧客を魅了している。『これは美味しそうだ』と思わせようとしている」と彼は語る。
東京のオフィス街にある丸亀製麺の店舗では、ランチタイムに会社員たちの行列ができるが、この店の魅力は手頃な価格で食事を提供することのみではない。オープンキッチンではうどんがこねられ、伸ばされ、切られ、茹でられる様子を間近で見ることが可能で、視覚的にも楽しめる。「最も大切なのはエクスペリエンスだ」と粟田は語る。
丸亀製麺は最近、優れた麺づくりの技術や知識を有する「麺職人」を、日本国内の約840の全店舗に配置したと発表した。麺職人の階級は、技術や熟練度によって一つ星から四つ星までの4段階に分けられており、一つ星の合格率は約30%という狭き門だという。「このこだわりを武器にして我々は世界市場に挑戦したい」と粟田は語る。
グローバル展開の加速
この目標を実現するために粟田は1000億円の投資枠を設定し、そのうち約20%がすでに投資されており、さまざまなブランドから100以上の投資提案を受けている。彼はまた、トリドールの海外収益の伸びを牽引する2大ブランドである丸亀製麺と香港の米粉ヌードルチェーン「譚仔三哥(タムジャイサムゴー)」の店舗数を伸ばそうとしている。丸亀製麺は3月にカナダに進出しバンクバーに第1号店をオープンした。同ブランドは、米国、台湾、香港、カンボジア、インドネシア、ベトナム、フィリピン、英国ですでに店舗を構え、今回の出店で10の国と地域に拡大した。
一方、トリドールが2018年に約300億円で買収した譚仔三哥は、2021年に香港取引所に上場して約150億円を調達した後に、年内にオーストラリア、ニュージーランド、フィリピンで新たな店舗をオープンし、2025年初めにマレーシアにも進出する予定だ。 米国のレストランコンサルティング会社テクノミックのアーロン・ジョーデンは、「トリドールは、丸亀製麺という強く差別化されたブランドを持っているが、マクドナルドやヤム・ブランズのような大手と競争するのであれば、ハンバーガーやフライドチキン、ピザなどを提供するファストフードチェーンが必要だ」と述べている。