欧州

2024.09.11 18:30

ロシア、イラン製弾道ミサイル取得で「墓穴」も ATACMSの制限解除後押しする可能性

ウクライナ軍はM30/31を主に前線の目標に対する攻撃に用いている。具体的に言えば、ロシア軍の突撃部隊や連隊本部、小規模な補給所、接触線近くの橋などだ。ウクライナ国内のロシア占領地域にある軍用飛行場や防空施設、比較的大規模な補給所など、より遠方の目標に対する攻撃には、重量級のATACMSをHIMARSか多連装ロケットシステム(MLRS)から発射できる。

Fath-360が向いているのはその重量と射程からして、前線に近い都市に対する攻撃だろう。ウクライナのコラムニスト、アレクサンドル・コバレンコは、ロシアはこのミサイルを「国境地帯の近辺、とくにスーミ州とハルキウ州の国境地帯近辺に対するテロ攻撃に使うだろう」と予想する一方、「ウクライナ国内の後方や戦闘地域に重大な影響を与えることはない」との見方を示している。

要するに、Fath-360はことさら驚くような兵器ではないということだ。ロシア軍がウクライナの都市に向けて発射しているミサイルの数が月に300発強であることなども踏まえれば、第1弾の200発という数も戦局に大きな影響を与えるには少なすぎる。

むしろ、ロシアはイランの協力でミサイルの在庫を少しばかり増やしたことを後悔する羽目になるかもしれない。この協力が最後の一押しとなって米国と英国の首脳は、ウクライナ軍がATACMSと英国製ストームシャドー巡航ミサイルをロシア国内の奥地にある目標に対する攻撃に使用することを、ついに認めるかもしれないからだ。

ブリンケンとデービッド・ラミー外相は11日にキーウを訪問してウクライナのボロディミル・ゼレンスキー大統領と会談することになっており、そこではATACMSとストームシャドーの使用制限解除が主要議題になる見込みだ。

現時点では誰もはっきりとした約束をしているわけではないが、ブリンケンは、Fath-360の到着は使用制限について再度話し合う理由にはなると認めている。ブリンケンはウクライナ側の主張に「真剣に耳を傾けるつもりだ」と語っている

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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