上場市場に投資する金融機関の場合、多くは自己資金を使って投資しています。そのため、外部からの影響をそれほど受けずに、より長期的な運用を行える可能性があります。ただし、他の投資家と同様に、金融機関も定期的にポートフォリオを再評価します。おそらく世界で最も長期志向の投資家の1つであるウォーレン・バフェットのバークシャー・ハサウェイでさえ、平均保有期間は約7年です。
ベンチャーキャピタルの視点
ベンチャーキャピタルも最終的には持分を売却する必要がありますが、ファンドのストラクチャーやプライベートマーケットの性質上、すぐに売却することは困難です。これはVCの欠点でもあり、特徴でもあります。VCファンドでは、少なくとも10年間は資金を引き出せないことを事前にファンド出資者に説明し、契約を結びます。また、プライベートマーケットに特化しているため、売却の機会自体が圧倒的に少ないです。さらに、市場取引によって評価額が日々変動することもなければ、パンデミックなどが持分の価値にリアルタイムで突然影響を及ぼすこともありません。こうした特徴により、長期的な視点で投資せざるを得ないのですが、これはスタートアップ投資にとって多くの場合、良いことでもあります。会社を成長させる過程はジェットコースターのように浮き沈みが激しく、その中で感情的にならずに冷静な投資判断を下すのは非常に難しいからです。メリットと現実のバランス
私がこの記事を書いたのは、スタートアップ企業が上場投資家から資金を調達することを否定したいからではありません。上場投資家から資金調達することには、確かにメリットもあります。例えば、かなり多くの資金を調達する必要がある場合、上場投資家のほうがはるかに大きな資金プールにアクセスできます。また、上場投資家のほうが一般的に、上場市場で会社がどのように評価されるかについて深い理解を持っているため、事業やストーリーの伝え方について有益なフィードバックを提供できるでしょう。しかし、上に述べたような上場投資家の事情や実際の行動について十分に理解せずに、スタートアップが「IPO後も長く保有する」というセールスポイントを過大評価してしまう傾向があることについては注意が必要だと思います。どの投資家も最終的には持分を売却しますが、それがどのタイミングで行われるかについては、各投資家の投資ストラクチャーやインセンティブが大きく影響します。スタートアップがレイターステージの複雑な資金調達を成功させ、上場企業としての準備を整えるためには、こうしたダイナミクスを理解することが極めて重要です。
連載:VCのインサイト
過去記事はこちら>>