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2024.09.14 08:00

「株価が2倍になった時のPER」を考えよ、米プロ投資家が伝授する必勝術

ドットコムバブルの経験から生まれた規律

こうした投資のルールは、カリナンが現在のファンドを立ち上げる前に、いくつかの市場サイクルを身をもって経験したことから生まれたものだ。

ハーバード大学フットボール部のランニングバックとして活躍し、同校のスポーツ殿堂入りも果たした彼は、4年生の春にニューヨーク・ジャイアンツのトライアウトのオファーを受けたが、彼は結局、米会計事務所大手のアーサー・アンダーセン(現在は解散)でコンサルティングと監査の仕事に就くことにした。彼はそこで3年働き、その後ハーバード・ビジネス・スクールで2年学んだ後、1987年にボストンを拠点とするパトナム・インベストメンツに入社する。当時彼は、モルガン・スタンレーのリサーチディレクター、デニス・シェルヴァの論文に感銘を受け、小型成長株に注目するようになった。

1990年代半ば、カリナンはロバートソン・スティーブンス・インベストメンツに転職し、サンフランシスコに移り住む。そして彼は、インフレの急進や2000年3月に弾けたドットコムバブルを経験する。その経験があったからこそ、彼はリスクを軽減するために上で紹介した独自のルールを導入したのだ。バブルが弾けた2000年代には、新規株式公開(IPO)を行うベンチャー企業がほとんどなかったため、彼は2006年に少数の銘柄への集中投資を方針とするファンドを設立した。これが現在のオポチュニティ・ファンドの原型である。

後に、同ファンドは2012年にロバートソン・スティーブンスから独立し、さらに2016年にはオスターワイスに移籍し現在にいたる。オスターワイスは現在、オポチュニティ・ファンドの他に3つのファンドを運用し、総運用資産は74億ドル(約1兆600億円)にのぼる。

カリナンとともに共同ポートフォリオマネージャーを務める38歳のマット・アンガーは、ロバートソン・スティーブンスを辞めてカリナンのチームに加わった。もう1人の共同ポートフォリオマネージャーである41歳のブライアン・ウォンは、オスターワイスの別ファンドから移籍してきた人物だ。カリナンは2021年にこの2人を共同ポートフォリオマネージャーに指名している。
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翻訳=江津拓哉

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