36歳となった今年、米国で本格的に「コメディアン」として活動していく決意を固めた。これは渡辺のキャリアのなかで3度目の大きな挑戦だ。お笑い芸人を夢見て吉本興業の養成所に入った2006年、日本でマルチタレントとしての成功を掴みつつも米ニューヨークへの移住を決めた21年、そして今である。
すでにインフルエンサーとして世界中にファンを抱える渡辺だが、なぜ今あらためて「お笑い芸人 /コメディアン」に本腰をいれるのか。来日中の彼女に、決意の背景を聞いた。
2023年9月2日、渡辺直美は約600人の観客を前にハリウッドの「フォンダ・シアター」の舞台に立っていた。ニューヨーク、マイアミ、シカゴなど全米7都市を巡るトークライブツアー「Naomi Takes America -The Podcast LIVE-」のツアーファイナルだ。渡辺にとって初の全編英語&台本なしの舞台で、観客と英語でのアドリブトークを展開。客席には日本人と現地のファンが入り交じる様子が見られた。
アドリブトークとは、例えばこんな感じだ。客席から「アメリカに移住して、良いなと感じたことは?」と聞かれ、「アメリカ人はみんなフレンドリーで『週末どうだった?』って聞いてくるよね? でも、そんなに毎週末特別なことある?」と答えて会場を沸かせる。渡辺が持ち前の明るさとユーモアで観客を魅了し、ツアーは大盛況に終わった——。
トークライブツアー「Naomi Takes America -The Podcast LIVE-」のニューヨーク公演の様子
言語の壁を越えて愛される理由
このツアー中の23年8月にインスタグラムのフォロワー数が1000万人を突破した渡辺。Xは201万、YouTubeは 141万のフォロワーを抱えるメガインフルエンサーだ(24年8月29日時点)。言語の壁を越えて愛される理由は、その“飾らなさ”にある。インスタには、海外セレブリティとのショットや個性的なファッションスナップといったクールな姿を投稿したかと思えば、寝起きのすっぴん姿も投稿する。YouTubeでも寝ている様子を生配信するという企画で大きな話題になった。さまざまな作品や舞台を通じてその圧倒的なパフォーマンスを見せつけながらも、飾らずに素をさらけ出すスタイルが、ファン心をくすぐっているのだろう。
ビジネスでもその才を示し、プロデュースするファッションブランド「PUNYUS(プニュズ)」(ウィゴー)は、24年3月に10周年を迎えた。「体形に関係なく誰もがおしゃれを楽しめる」をコンセプトに6Lまでの豊富なサイズを展開するプニュズは、プラスサイズのアパレル市場を開拓した先駆的ブランドといえる。
18年からはカラーコンタクトレンズブランド「エヌズコレクション(N'sCOLLECTION)」もプロデュース。23年の人気ブランドランキング(エース調べ)で10位にランクインするほど、カラコンの定番人気ブランドに成長した。