経営・戦略

2024.09.11 08:00

米最大級のチーズメーカー、Sargentoを支える「家族経営」の理念

ルーツは1940年代

サージェント創業者のレナード・ジェンティンは、第二次大戦が終戦を迎えた後、ウィスコンシン州の小さな町、プリマスで葬儀場を含む複数の事業を営む起業家だった。1940年代後半にデリカテッセン(サンドイッチや持ち帰り用の西洋風惣菜を売る飲食店)を経営したいと考えた彼は、葬儀場の一角にプリマス・チーズ・カウンターと呼ばれる店を開いた。

その後、1948年までに、米国の各地にチーズを郵便で送る事業を成功させた彼は、他社に先駆けてチーズの真空パック技術を導入して製造を拡大し、全米の食品スーパーに送り込んだ。

レナードの次男にあたるルー(現CEOのジェンティンの父親)のもとでサージェントはさらに成長を続け、事業を拡大した。ジェンティンは、父親と叔父たちが家業を新たな高みに引き上げる様子を見守り、ノートルダム大学を卒業し、イリノイ州のロヨラ大学でMBAを取得した後に、シカゴの商業銀行で3年間働いた。

2000年にサージェントに入社した彼はまず、シュレッドチーズのマーケティングマネージャーとして、同社のキャリアをスタートした。その後、製品、調達、リテールセールスなどの主要部門を経て、2013年に父親が30年間務めたCEO職を退任すると、ジェンティンがその職務を引き継いだ。

彼がCEOに就任してからの最初の10年間で、会社は毎年4%の成長を遂げた。「サージェントは、製造プロセスや品質を厳密に管理し、加工剤や添加物を用いないナチュラルチーズに特化することで今日のポジションを築いた」と、30年以上にわたりチーズ業界に携わるコンサルタント企業、The Food Connector創設者のエド・ジマーマンは述べている。「彼らは日常的なチーズの体験を、まるでシャンパンのような特別なものにするのが得意だ」と彼は付け加えた。

しかし、ここ最近はラクタリス傘下にあるクラフトとの競争が激化している。クラフトチーズは今年3月、ラクタリスによる買収以来で初の新商品、シグネチャーシュレッズを発売した。この製品はチェダーやモッツァレラ、メキシカンの3種類をブレンドした幅広のシュレッドが特徴で、溶けやすさが向上している。

一方、サージェントは、スナック用チーズの分野で革新を続けており、ジェンティンは、今後の数年間で毎年5%の成長を見込んでいる。サージェントはまた、2022年に米国の主要なストリングチーズブランドの一つであるベイカーチーズを、非公開の金額で買収した。

ジェンティンは、今後もサージェントを家族経営のままで運営していくことを望んでおり、約2600人の社員たちも、それを望んでいる。同社には、勤続30年以上の従業員が約110人いて、その中には今年、勤続60年を祝う者がいる。

「私たちは常に、長期的な視点でビジネスを運営してきた。それこそが私たちが投資を続け、ビジネスだけでなく、会社のメンバーのために最善を尽くすことを可能にしている」とジェンティンは語った。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事