この法案は6月に下院で可決されたもので、中国のDJI製のドローンの使用を禁止し、同社を国家の安全保障上の「許容できないリスクを持つ機器の製造元」のリストに追加することを目的としている。
この法案の提案者であるエリス・ステファニック議員は声明で、「DJIのドローンは、TikTokに翼が加わったような安全保障上の脅威をもたらす」と述べている。しかし、この法案の支持者たちはドローンによる国家の安全保障上の脅威を示す具体的な証拠を示しておらず、この法案が、趣味や公共の安全のためのDJI製品の利用にどのような影響を与えるかはまだ明らかになっていない。
DJIのドローンは、初心者にも使いやすく、信頼性が高い手頃な価格の製品として、米国の警察や消防署などでも利用されている。同社のドローンは、行方不明者の捜索や山火事の追跡などの公共安全ミッションにおいても広く使用されている。
ドローンの専門サイト、The Drone Girl創設者のサリー・フレンチによると、DJIのドローンの操作方法は約20分で習得可能だが、他社製品の場合は、より高度な技術的専門知識が必要だという。
この法案の提案者は、救命活動に従事する人々の間で中国製ドローンが人気があることを認識しているが、それを批判している。ステファニック議員が提案した別の法案のDrones for First Responders Act(ファーストレスポンダーのためのドローン法案)は、米国はこの分野で必要な無人航空機の供給を、「中国に頼るべきではない」と主張している。
しかし、2020年10月に米国土安全保障省(DHS)が公開した公共安全と緊急対応の目的でドローンを使用する場合のシステムテストでは、DJIの競合にあたる中国メーカーのAutel Robotics製ドローンが、「最軽量で最も速く、最も安価」だと評価されていた。
さらに、ドローンの研究で有名なニューヨーク州のバード大学は同年、DJIのドローンが公共安全機関の市場シェアの90%を占めており、香港のYuneecと中国のAutel Roboticsがそれに続いていると発表した。同大学はまた、公共安全機関が使用するドローンの大部分がコンシューマ向けのモデルだが、Skydio(スカイディオ)などの米国のメーカーが、利益率の低さからコンシューマ向け市場から撤退していると指摘した。