たしかに、数十個の連隊や旅団で構成される第2諸兵科連合軍の兵力規模は、ポクロウシク方面を担当するウクライナ軍部隊、「タウリヤ」作戦戦略軍集団のざっと4倍にのぼる。また実際、ロシア軍部隊は2月中旬にドネツク州の要塞都市アウジーウカを陥落させて以降も、この廃墟の町から西のポクロウシクに延びる軸で着実に前進を遂げてきた。
しかし、ウクライナ側は8個かそこらの旅団から抽出した12個ほどの大隊をロシア西部クルスク州への侵攻に投入しながらも、なお4〜5個の旅団を予備部隊として温存していたもようだ。各旅団は最大2000人規模で数百の重装備を保有するとみられる。ロシアのプロパガンディストのエフゲニー・ノリンは、これらの部隊は「おおむね無傷で、装備が整った」状態にあるとの見方を示していた。
これらの予備部隊の一部は現在、ポクロウシクやその死活的に重要な補給線から8〜10kmほどの一帯の最終塹壕線や要塞化された集落で、ようやく戦闘に参加している。あるロシア人軍事ブロガーは「まさに予想されていたとおりのことが起こっている。ウクライナ軍は反撃を開始した」と報告している。そしてウクライナ側の反撃は、少なくとも現時点では前線の安定化に寄与している。
ポクロウシクの東方面で数カ月続いてきたタウリヤ軍集団の後退について、原因は兵員不足というより築城不足にあると指摘してきたウクライナ側の観察者からは、増援による効果に驚きの声も上がっている。
ウクライナの調査分析グループ、フロンテリジェンス・インサイトの創設者である元ウクライナ軍将校のタタリガミ(@Tatarigami_UA)は「少し前までは、ポクロウシク方面に追加の旅団を投入しても状況はたいして変わらないだろうと言われていた。ところが、わたしたちはいま、それが実際に状況に変化をもたらしているのを目の当たりにしている」とコメントしている。