IT業界の新流行語「ギグ・エコノミー」とは何か?

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このところ米国のメディアで頻繁に使われるようになったのが「ギグ・エコノミー(gig economy)」という言葉。バンドの単発のライブを「ギグ」と呼ぶが、ネットを通じて入ってくる単発の仕事を請け負うことを総称して「ギグ・エコノミー」という用語が使われている。

現在、米国で普及しているサービスとしては、便利屋サービスのTaskRabbitやHandyなどが挙げられるが、ここでは最近ユーザー数を伸ばしているBreezeworksについてエレン・ヒュエット記者がリポートしている。

ジャスティン・ベリー氏(33)はテキサス州近郊に住む空調関連の技術者だ。彼は新規の顧客獲得を期待し、仕事の管理を支援してくれるソフトウェアにアクセスした。候補として考えたのはTaskRabbitやAmazon Home Services、Handyといったギグ・エコノミー系のサービス。しかし、一番頭を悩ませたのがコストの問題だ。仕事が決まる度に仲介料金を取られるようなサービスは避けたいと思った。

その結果、選んだのがBreezeworksだった。このツールは仕事の予定管理や見積作成、請求書作成などが可能な上、顧客と直接連絡をとることもできる。しかも、利用料金は月額固定制で、仕事ごとの仲介手数料は発生しない。

Breezeworksのサービス開始は2013年。CEOのマシュー・コーワンは起業の動機を「ギグ・ワーカーの能力を拡張し“デジタル民主化”を果たすこと」と語っている。

ギグ・エコノミーのプラットフォームは、自分たちのサービスこそがプロフェッショナルが仕事を見つけるのを容易にすると主張する。しかし、そこで仕事を見つけたプロたちは、結局のところプラットフォームが邪魔になっていると感じる場合も多いのが現実だ。

サンフランシスコ・クロニクル紙の記者は、ある便利屋にインタビューをしている。その便利屋は最初、Homejoyで顧客を見つけて喜んだが、しばらく経つと顧客と直接連絡して仕事をとるようになったという。
「Homejoyは顧客らに1時間あたり60ドルを請求し、そのうち25ドルを差し引いて、35ドルを労働者に渡す。僕が直接契約して働くなら、顧客には1時間40ドルを請求する。依頼人はお金の節約になり、僕もちょっと収入が増える」と彼は話している。Homejoyは契約ワーカーから4件の訴訟を起こされ、その後サイト閉鎖に追い込まれた。

Breezeworksはギグ・ワーカーとスモールビジネスの運営者の双方を対象とし、特に配管工事人や空調技術者、一般的な請負業者や便利屋たちに人気がある。変わったところでは、「馬専門の歯医者」や、誕生日パーティーに王女様を宅配するサービスなども登録されている。ワーカーたちは月額料金19.95ドル(個人事業主)、あるいは39.95ドル(少人数チームの場合)を支払う。「私たちのサービスは週に1つの仕事が得られればいいという人にはあまり向いていません」とコーワンCEOは説明する。

Breezeworksは昨年11月に500万ドル(約6億2000万円)のシリーズA投資を獲得している。競合にはmHelpDeskやJobberなどがあるが、CEOのコーワンは他社の動向をさほど気にかけていないと話す。
「(競合他社の)どれも支配的なシェアは獲得していません。結局のところ我々が互いに競争し合うことが、皆さんをペンや紙から解放することになるのです」

文=エレン・ユエ(Forbes)/ 翻訳編集=上田裕資

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