欧州

2024.09.06 17:00

ポクロウシク方面の交差点にロ軍が繰り返し装甲車投入 ウクライナは戦車鹵獲に成功

損傷していないように見えるT-72をロシア軍部隊が乗り捨てた理由は不明だ。エンジンの不具合など何らかの故障があったのかもしれない(編集注:この道路を封鎖する狙いだった可能性も指摘されている)。いずれにせよ、それを狙うだけの勇気のある者にとっては格好の獲物だった。

鹵獲作業は、戦場の状況から、できるだけ装甲車両から出ずに行うのが望ましかった。アゾフ旅団による4月の鹵獲では、中間地帯に地雷がかなりの密度で埋設されていたため、装甲車両で横切るのは双方の部隊にとって非常に危険だった。夜間、徒歩で鹵獲要員を送り込むほうがまだ安全(といっても危険なことに変わりはない)だった。

セリドベでは、地雷の脅威は比較的小さいようだ。カラダフ旅団のT-64はやたらと自由に、それも白昼に市内を動き回っている。もっともこれも、ウクライナ軍全体をここ何カ月も悩ませている深刻な歩兵不足の裏返しなのかもしれない。

T-64の乗員はもぬけの殻のT-72を見つけるや、即座に行動に移った。味方のドローンが引き続き上空から見守るなか、T-64は煙幕を張り、T-72に牽引ケーブルをつなぐ。そうしてT-64が自陣のある西側へT-72を引っ張っていくところで、カラダフ旅団の動画は終わっている。

ロシア軍が戦車を1両失ったところで、今年2月に陥落させたアウジーウカからポクロウシクにいたる軸の11カ月におよぶ攻勢が失速するわけではない。また、ウクライナ軍が戦車を1両得たところで、ポクロウシクやその周辺の都市や村が4倍の兵力を擁するロシア野戦軍による破壊や占領から守られるわけでもない。

一方で、この日の戦車鹵獲がウクライナ側の戦果であるのも確かだ。最も重要なのは、T-64の戦車兵たちが勇気や創意工夫を示し、ほかの部隊の士気を高めるような行動をしたという点かもしれない。ポクロウシクをめぐる現在の戦いでウクライナ側が最終的に勝利するためには、こうした勇気や創意工夫が必要になるだろう。

forbes.com 原文

翻訳・編集=江戸伸禎

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