約40億年前に起きたと推定されているこの衝突は非常に大規模だったため、結果としてガニメデの自転軸が移動した。その明確な痕跡が今なお残されている。
特異な衛星
ガニメデは直径が5268kmで、惑星の水星より大きく、火星より少し小さいだけだ。太陽系では、衛星としては最大で、8つの惑星に次いで9番目に大きい天体だ。惑星科学者が知る限りにおいて、大気と磁場の両方を持つ唯一の衛星でもある。エウロパ、カリスト、イオとともに木星のガリレオ4大衛星の1つだが、ガニメデだけに見られる特徴として、特定の1地点を中心とする同心円状に広がる溝状の構造に表面が覆われている。
2020年に発表された研究では、ガニメデ表面の溝状の構造地形は、直径100~300kmの小惑星の衝突によって形成された可能性があることが示されていた。今回の研究はその最新の続報にあたる。
ガニメデの溝
学術誌Scientific Reportsに3日付で掲載された今回の論文の執筆者で、神戸大学の惑星学者の平田直之は「木星の衛星のイオ、エウロパ、ガニメデ、カリストは、それぞれ興味深い個性を持っているが、私が興味を引かれたのはガニメデの溝状構造だった」と話す。「この地形は、約40億年前の小惑星衝突によって形成されたことがわかっているが、この衝突がどれほど大規模だったかや、ガニメデにどのような影響を及ぼしたかについては、明らかになっていなかった」巨大衝突
衛星や小惑星の衝突現象のシミュレーションを専門とする平田は、ガニメデに衝突して自転軸を変動させた小惑星の直径が約300kmだった可能性が高いとの推算結果を得た。これは、約6600万年前に地球に衝突し、メキシコのユカタン半島の近くに直径約180kmのチチュルブクレーターを形成した小惑星または彗星の約20倍の大きさだ。この衝突によって引き起こされた「衝突の冬」が数十年間続いたことで、恐竜が死滅したと考えられている。
最近の研究では、恐竜を絶滅させた小惑星は、太陽系形成初期に木星軌道の外側で形成されたことが明らかになった。