──海藻の海外展開における課題はどのようなものがあるのでしょうか。
相馬:最大の課題といえば、海藻の種類にもよりますが、あの独特な磯の香りですね。海藻や魚介類などの水産物に馴染みのないエリアの人たちには受け入れられにくい。
三木:そうですよね。この魚の臭いも含めて日本人が美味しいと思うものが、アメリカ人にとっては苦手だったりするわけで。これらをどうアメリカナイズするかという課題を解決できれば、ビジネスチャンスになるかもしれません。
日本の海藻文化を、そのまま伝えるのは難しい。私が作っている和菓子も、日本人が思っているものとは全く違うものです。そもそもアメリカ人は、和菓子のやさしい味わいは理解できないので、コーヒーやシャンパンなどに負けないものを作らなければなりません。ヒントにしたのは、カリフォルニアロール寿司です。これがあったから、今では本物の寿司がアメリカでは大人気です。このようにワンクッション噛ませることで、先々海藻が広がるのではと考えています。そのために、“カリフォルニア和菓子”なるものとはどのようなものだろうかと考えて生まれたのが、海藻ドリンクの『OoMee』です。
相馬:もう一つの課題は、海藻研究費の不足です。海藻は全部で3万5000種類ぐらいあり、そのうち日本の周辺だけで1500種類はあります。その分、日本にはいろいろな海藻料理があるのですが、海藻の養殖技術のアップデートはかなり遅れている印象があります。原因の一つとして研究費の不足があるのでは、と思います。
三木:日本の大学の年間研究費はごくわずかで、アメリカでは、従業員1人分の月給にもなりません。その分自分たちで稼がなければなりませんが、大学の先生自体がマネタイズの方法に疎いのです。そこで我々が大学と連携して成功事例を一つでも作らなければと、奔走しているところです。
相馬:せっかく日本がいい技術を持っていても、それをビジネスとして活かしていかなければ、国内資本による研究は進められませんからね。
三木:さらに地方の会社がおもしろい特許や技術を持っていても、量産対応できないことも課題として挙げられます。そのため、我々は量産のプロフェッショナル集団を抱えました。量産も販売も行って、利益を還元するという仕組みにしないと日本の技術は守っていけません。今はそれを担う日本のプレイヤーがいない。歯痒いところです。
海の栄養分不足 真の循環とは?
──これらの課題に対して、どのようなブレイクスルーがあるとお考えでしょうか相馬:そもそも海藻の量自体が減っているので、まずは海藻を守っていかなければならない。原因の一つは、暖かい地方に生息する海藻を食べる魚「アイゴ」が、海水温の上昇に伴って北上し、日本周辺の海藻を食べてしまうことだと言われています。このアイゴは棘に毒があり、料理人は調理を嫌う魚ですが、これを食べる文化にアップデートしていくことも一つの方法だと思います。
また、海藻の多くは天然ものです。環境を生かした栽培領域を増やしていくことがもう一つの鍵になるかと。環境に関しては、最近、山のミネラル分が海に届かなくなったと言われています。ダム建設や治水工事に加え、もうひとつは完璧な汚水処理による海の栄養分不足が問題となっているそうです。環境負荷軽減のためと“クリーン”にするのも、生態系の循環を考えると、その内容や程度に配慮する必要があるというのが興味深いです。1カ月に1日だけ汚水を流す日を決めるといった取り組みがあってもいいんじゃないかと。