美大卒起業家の問いが形に 広がるデジタル名刺「プレーリーカード」

プレーリーカード共同代表の坂木茜音

現在、坂木と片山が仕事をする「アサヒ荘」は、北千住の商店街から入った路地にある一軒家だ。漫画家を育てた「トキワ荘」にあこがれ、地名をとって「アサヒ荘」と名付けたのは管理人である坂木である。
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引き戸の玄関、中庭に面した広い縁側、掘り炬燵のある仏間など、昔ここで家族が暮らしていた記憶をそのままに、リノベーションせずに使っている。現在の住民は、坂木と片山を入れて4名。「何かを作ってみたい人」が自然と集まり、クリエイターのシェアハウスとなった。
起業家兼アーティストの坂木が住民と描いた作品が飾られている玄関


起業家兼アーティストの坂木が住民と描いた作品が飾られている玄関


もともと、プレーリーカードは、アサヒ荘の住民へのプレゼントとして作ったものだった。アーティストだったその住民は、海外へ旅立つにあたって名刺を大量に用意していた。Instagramにアップした作品を見てもらうため、QRコードを印刷した名刺を渡したかったからだ。

「アーティストなのに、カードに作品よりQRコードがドンと印刷されていることに違和感を感じた」という坂木は、同じく住民の片山に相談。カードをスマホで読み取ることで作品が表示される仕組みを作ったのがプロトタイプ第一号となった。それがクリエイター仲間で評判となり、徐々に口コミで広まっていった。
プレーリーカード開発当時の片山(中段左)と坂木(下段右)

プレーリーカード開発当時の片山(中段左)と坂木(下段右)

ベータ版を改良していく過程で、「なぜ、日本では紙の名刺を交換する文化が続いているのだろうか」という問いや、「このカードは出会いをイノベーションできそう」という予感が坂木の中で高まっていったという。

坂木の問いや予感をビジネスとして実現していった片山は、リクルート、ギフティ、メルカリとベンチャー業界を歩む中で、コミュニケーションアプリの開発を経験しており、ビジネス側へのブリッジができた。
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2023年2月に社名を株式会社スタジオプレーリーとし「プレーリーカード」として正式にサービスをローンチした。現在、チームは20人程度になり、経営に加えて坂木がデザインやPRを含めたブランディングを、片山がプロダクトとソリューション開発を担当している。

スタジオプレーリーのメンバースタジオプレーリーのメンバー

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